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Sugar Box
第5章  黄色い水仙を抱き締めて  * 前 *
  


 沖兎さんの口から出た言葉に止まってしまった。

 相手が居なければどうやって“愛情”を示したらいいのだろうか・・・。


「玲くん・・・、大丈夫?」


「・・・僕の所為、ですね。」


 “恥ずかしい”とか“言わなくても判る”とか駄々をこねていたから。


「玲くん。違うよ!これは、事故だったんだからっ!
 先生も激しく頭を打ったのが原因だって言っていたし。ずっとじゃないから、大丈夫だよ。」


 気遣いの言葉も優しい触れ合いもなにも感じなかった。
 もうどんなに“愛情”を示しても応える人は、居ないのだ。


「月瀬。俺たちも手伝うから、落ち着いて一緒に頑張ろう。」


「・・・は、い。」


 “頑張る”って、なにを頑張ればいいのか判らない。それでも立ち止まっては、居られない。


「黒峰、さん・・・」


 のどがつかえる。


  
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