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結螺(ゆら)めく夏
第2章 夏祭りの夜
「……おい、結螺」
夜見世が始まる前、龍次の部屋の前を通った僕に、部屋から顔を出した龍次が声を掛ける
「さっき、用があって俺の部屋に来たんだろ……何だ?」
「………」
ふい、とむくれた顔を逸らし、龍次の横を通り過ぎようとする
その態度がしゃくに触ったのか、龍次の眉尻が吊り上がり、僕の二の腕を掴んで引っ張る
「……まさかと思うがお前、俺が見世に出す前の遊男に手ぇ出したと思ってねぇよな?」
そのまま強く引き寄せられ、僕の胸が不覚にも高鳴ってしまう
それを隠すように僕は龍次を睨み上げた
「……単なる、身体検査でしょ?」
そう言ってむくれたまま目を逸らすと、龍次が大きな溜め息をついた
「単なる、仕込みだ
受け入れた事もねぇアソコを解して、客にぶち込まれても傷付かねぇ様にするんだよ」
龍次の汚く吐き捨てた言葉に、僕は奥歯を噛み締める
「……僕にはそんなの、無かった…」
その台詞が意外だったのか、一瞬龍次の目が見開かれる
「そりゃ、お前は感度が良すぎて……」
……感度、感度って
そんなに良すぎるんなら
龍次が丁度良くなるように仕込めばいいだろ……?
逸らしたままの瞳が、涙でじわりと潤む
その様子に、龍次が再び大きな溜め息をついた
「……仕込み中に、遊男が果てるのは禁止されているんだ
だから、お前には出来なかったってだけだ」
確かに僕は、龍次に陰部を検視された後
内腿を撫でられただけで感じてしまい、声が漏れてしまった……
……けど、だからって
何もいきなり客の前に、未経験の僕を放り出さなくたって……