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愛里 ~義父と暮らす小学六年生~
第7章 体いっぱいの『気持ちいい』
「単身赴任?」
家族三人が揃ったリビングで綾香が問いかけた。
紅茶のカップを持った幸彦が頷く。
愛里はカルピスの入ったコップをテーブルに置くと、二人の話に聞き入った。
「僕の会社が大阪に支社をつくったのは知ってるよね?」
「ええ」
「実は、そこの支社長が事故に遭ったんだ」
「まあ…」
心配そうに綾香が指を組み合わせる。
幸彦の営むオーダーメイドの家具の販売会社は、春に大阪に念願の支社を設立した。物流の西の拠点と会社の拡大を狙って幸彦やその他の社員がずっと思い描いていた、大阪支社だった。
「まあ命に別状はなかったんだけどね、結構な大怪我で。リハビリも含むと数カ月は復帰が出来ないらしいんだ」
大阪支社は幸彦と部下の一人が何度も現地に飛び、根回しと市場の調査をした結果の春の創設だった。取引先の開拓も二人で行った。
最初こそ自分も大阪と東京を往復したが、支社長に据えたその部下が頑張ってくれたおかげで、ここ最近は東京での仕事に専念できるようになった。
その支社長の戦線離脱は、大阪支社の機能不全を招きかねなかった。何せ取引先に顔が効くのは自分と支社長の二人しかいない。新しい会社でまだ規模も小さいこともあって若い社員ばかりを配属していた。
次の世代のために将来性のある若手に会社を一から作り上げてほしかった。そのための大阪支社でもあった。
その目論見が裏目に出た。ベテランは支社長一人だ。まだ実務の面でも貫禄でも若手社員の敵うところではない。
いちばんの解決策は幸彦自身が大阪に飛ぶことだった。
家族三人が揃ったリビングで綾香が問いかけた。
紅茶のカップを持った幸彦が頷く。
愛里はカルピスの入ったコップをテーブルに置くと、二人の話に聞き入った。
「僕の会社が大阪に支社をつくったのは知ってるよね?」
「ええ」
「実は、そこの支社長が事故に遭ったんだ」
「まあ…」
心配そうに綾香が指を組み合わせる。
幸彦の営むオーダーメイドの家具の販売会社は、春に大阪に念願の支社を設立した。物流の西の拠点と会社の拡大を狙って幸彦やその他の社員がずっと思い描いていた、大阪支社だった。
「まあ命に別状はなかったんだけどね、結構な大怪我で。リハビリも含むと数カ月は復帰が出来ないらしいんだ」
大阪支社は幸彦と部下の一人が何度も現地に飛び、根回しと市場の調査をした結果の春の創設だった。取引先の開拓も二人で行った。
最初こそ自分も大阪と東京を往復したが、支社長に据えたその部下が頑張ってくれたおかげで、ここ最近は東京での仕事に専念できるようになった。
その支社長の戦線離脱は、大阪支社の機能不全を招きかねなかった。何せ取引先に顔が効くのは自分と支社長の二人しかいない。新しい会社でまだ規模も小さいこともあって若い社員ばかりを配属していた。
次の世代のために将来性のある若手に会社を一から作り上げてほしかった。そのための大阪支社でもあった。
その目論見が裏目に出た。ベテランは支社長一人だ。まだ実務の面でも貫禄でも若手社員の敵うところではない。
いちばんの解決策は幸彦自身が大阪に飛ぶことだった。