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姦譎の華
第14章 14
 よしよししているオッサンに微苦笑で小さく首を振られたから、箸を置き、新たな避難場所である隣の部屋へと引っ込んだ。母の欷歔が慟哭へと変わっていくのを遠くに聴きながら、順番を間違ったな、と後悔した。引っ越してきたばかりだから冷蔵庫は空っぽだ。現金を貰うほうが、ずっと喫緊だった。

 何とかオッサンに頼む方法はないだろうか。そう思案しているうち、ダイニングからは物音が聞こえなくなっていた。新居には部屋が一つ増え、ふすまよりもずっと頼もしい緩衝地帯が設けられている。こっそりと戻ってみると、思った通りそこに二人の姿はなく、母の声は向こう側のドアから聞こえてきていた。慟哭ではなくなっている。

 フローリングにはオッサンの上着と母のバッグが転がっていた。二人のいる部屋をもう一度確認し、必ず元の通りに戻せるように注意してオッサンの内ポケットを探る。取り出した長財布は、気前よく不幸な娘の要望に応えようとしていたわりには、手に持ったときの厚みがそれほどではなかった。開いてみて理由がわかる。金ぴかのカードは入っているが、現金は一万円札が二枚しか入っていない。事後報告で小遣いをせしめておくのもなくはないが、よほどのナニでない限り見た瞬間に気づかれてしまうし、せっかく金を出すつもりでいるオッサンに、よけいな不快感を与えてしまうわけにはいかない。

 長財布を元へ戻し、母のバッグを手に取る。化粧道具やハンカチなど、すべてがブランド物。中でも財布は圧倒的な存在感を示し、厚みよりも重さに驚いた。札入れを開き、仲間から一枚をはぐれさせることに何の躊躇もない。もともとこれらの金は、自分に回ってくるはずだったものなのだ。それを取り返すまで。

 原状回復させてアジトへと帰ろうとしたが、怪盗少女は勝ち誇るあまり被害者の間抜け面が拝みたくなった。足音を忍ばせてドアの前に立つと、母の嬌声が漏れ聞こえてくる。ふすまのような隙間はなく、音を立てないよう慎重にノブを捻り、薄く薄く、ゆっくりゆっくりとドアを開いて覗き込むと、周囲にダンボールが積まれるベッドの上で、母は膝立ちになっていた。前がそうだったという以外の理由は特になく、こちらへ尻を向けて男に組み伏されているものとばかり思い込んでいたから、正面に向き合った形にはギクリとさせられた。
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