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姦譎の華
第14章 14
「……もっと突いて、奥まで」

 しかし母はすぐに背後を振り返り、ベッドに寝転がるオッサンへ向けて腰をくねらせた。突き刺さっている場所はよく見えなかったが、本日も牝の穴は貪婪に牡の杭を呑み込んでいるにちがいなかった。

「んっ……、あぁ、そこ……ねえ、もっと。もっとして」
 呻くオッサンにかまわず、ベッドのスプリングを使って髪と胸乳を揺らし、不乱に腰をぶつけている。「ね、他の女よりずっといいでしょ? だからいっぱいきもちよくして。いっぱいよろこばせて……、それから、いっぱいほめて」

 住所が変わろうが、あいかわらずのようだ。前の街から逃げてきたのかどうかは知らないが、この住処を手に入れられた理由を想像できたところでドアを閉める。

 自分の部屋に戻り、寝巻に着替え始めた。この部屋にも用意された新品のベッドに心を躍らせながら、下衣を脱ごうとして違和感に気づく。

 下着の中のヌメリ。覗き込むと、古く色褪せてしまった布地の真ん中に、小さな染みができていた。

 部屋に戻る途中から下半身が妙に熱かった。颯爽と窃取を果たした矜持が気分を昂揚させているのだと思ったが、股ぐらの動かしがたい事実を目の当たりにすると、付け根の奥あたりの疼きは晴れやかさとは異なり、むしろ後ろ暗さを誘ってモヤついていた。

 母が、肉杭を突き刺してもらっていたのと同じ場所だ。

 いったい何に感応したのか、深く追求することを拒んでベッドへともぐりこんだ。真新しいシーツに包まれながら、ぴったりと脚を閉じ合わせ、眠りが訪れるのをひたすら待つ。

 いつ、眠りに落ちたのかはわからない。
 眠りから覚めたのは突然だった。

 体に重みを感じて瞼を上げると、全裸の母が馬乗りになっていた。

「な、なに……」

 振り落とそうとしたが、できなかった。腕を上げると、交叉した手首が引っ越しで余ったガムテープでグルグル巻きにされている。

「ふざけんなよっ、ブス!」

 髪を引っ張られ、揺らされた。後頭部を何度も打つが、枕を敷いてあるから痛みは無い。

「なに……、やっ……、もおっ、なにすんだよっ!」

 しかしどこかの時点で音を上げると思ったのに、ずっと激しく揺さぶってくるものだから、髪が抜けてしまうのも辞さず、不自由な両手を腕に打ち付けた。
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