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姦譎の華
第14章 14
 だがここ数年は、決して愛称として使われているのではなかった。男子は意気がって、女子は陰からヒソヒソと、あの子は耳が聞こえない、だからどうせ、何を言われているかわからない、そんな意味も込められた呼び名だった。耳は聞こえる。彼らもそれは知っている。子供じみたなりに残酷な設定を全員で「ノリ」として共有することで、クラスメイトの一人を疎外する罪悪感を薄めさせていた。

「そうか。いやごめん、オジサンもさ、昔のんたんって呼ばれてたんだよ。あの絵本って前からあるからね。いまでも同級生で呼ぶ奴がいるんだ。なんだか兄妹みたいで親近感があったんだけどなあ」

 親子ならともかく兄妹とか言ってくるオッサンに引くべきところだったが、改めて、ベッドの傍にしゃがんだ姿を見ていると、自然と溜息が出てきた。

「社長のオジサンなんかとは呼ばれるわけが違うよ」
「社長?」
「社長だからあいつを愛人にしたんでしょ?」

 驚いた顔をしたオッサンは、場違いな声を上げて笑い、

「いや社長なんかじゃない。それにママは愛人なんかじゃないぞ」
 そう言う間も、まだふき出しそうになりながら、「ま、そのうち社長になってやろうとは思ってる。そのうち、ね。ママのことも、もちろん、たーたんのことも、そのうち、なんとかするよ」

 やめろと言っているのに、呼び名を改めなかった。

「……オジサンはさ」
「ん?」
「あいつなんかのどこがいいの?」
 呼び方についてはもうあえてツッコまず、当然の疑問をぶつけた。「ヤバいよ、あれ。日に日に頭おかしくなってる」
「……たーたんはママが嫌い?」

 オッサンは真顔へと戻ったが、また、質問には答えなかった。

 愚問だった。どこに好きになれる要素があるというのだろう。

 こちらも答える気にはなれず、立ち上がってオッサンを見下ろした。

「ね、オジサンが社長になったらさ、私を秘書にして」
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