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姦譎の華
第16章 16
 島尾が己の手際の悪さを恨みつつ顔を上げると、稲田が丁寧にテープを剥がし終えたところだった。

 いつのまにか傍に来ていた稲田は、身を屈めて頭を同じ高さにし、聖女の──もはや威信に影の射した、ひとりの美しい女の耳元へと口を寄せた。

「多英さま。ずいぶんと……、お濡らしになられたんですね」
「……ふっ、く……」

 テープを捨てた手をコートの中へ忍び込ませ、片側のふくらみを優しく揉みほぐす。手に余るバストの感触もさることながら、淑姿を彩ったメイクは崩れてはおらず、嘆息が漏れる唇が朱艶やかに濡れ照っていた。真横から眺めていると、屈した親指で乳首を弾かれて、結びたい上下が吐息で捲れている。ほんの少し覗く白い歯は、街中望外に拝み得たパンチラを凌ぐ淫靡さだ。

「こんなところでエッチなことされ続けて、お濡らしになられたんですね」
「そ……、……、……っ!」

 何か言い返そうとするが、また乳首に爪を立てられて息を呑み込み、首を頻りに横に振る仕草は、もはや愛らしくさえ眺められた。

「隠さなくたっていいですよ、ビショビショなんでしょう?」
「ち、ちが……」
「すぐにわかることです。今日もそのパンティ、いただくんですからね。エッチな黒のTバックに、エッチなおツユがどれだけ染み込んでいるか、じっくりと、隅々まで調べてさしあげますから」
「なんでそんな……、ウンッ!」

 耳元に鼻先を埋ずめ、言いたいことを言いたいように囁き、多英が反論する途中お構いなしに舌を耳穴へと挿れた。

「い、稲ちゃん……」

 広角に開く美脚の真ん中に寸前まで顔を近づけておきながら、先輩は瞠目してこちらを眺めていた。女っていうものは……何でしたっけ? 一瞥で島尾を牽制し、首を傾いで腕に耳を隠したがっている美しい虜囚の髪を撫でる。
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