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姦譎の華
第17章 17
 持論の裏付けは特に用意していなかったくせに、後半はそれなりに当たっていた。

「……かもしれません」

 少し間を置いてから答えると、周囲から同時に、ほぉっと息が漏れた。

「そ、そうでしょうそうでしょう。けれど貴女は不満に思っている」
「不満に……、ですか?」
「隠したってわかりますよ。貴女は本当は、仕えたいんだ。信頼する相手の前で自分を晒け出し、たっぷりと可愛がってもらいたい、そう思っているはずです。でなければ、こんな店に来ますか? ハプニングを求めて、冒険しに来たりなんかしますか?」

 似非医者が核心に迫っていくと、背後が固唾を呑んだ。

「……そうですね」

 おおっ。外野の一人が思わず声を出す。

 似非医者はグラスをつかみ、氷を鼻に当てて飲み干すと、カウンターに景気良く底を鳴らした。

「わ、私とあなたは相性がよさそうです。一緒にプレイルームに行きませんか」
「相性?」
「そうです。セッ、セックスの相性ですよ」
「私を、誘ってらっしゃるんですか?」

 似非医者は静かに問う多英に寸時たじろいだが、慌てて咳払いをし、

「そ、そうです。私なら貴女に、最高の快楽を授けることができます。もちろん体も心も、傷つけたりなんかしません。あくまでも紳士的に、大切に……、いやいや初心者にそんな高度なプレイはしませんから、どうか私を信頼してください。そうすれば、貴女にふさわしい羞恥プレイを──」
「それは違うんじゃないですかねえ」

 並べ立てられていた口説き文句が、別の声によって遮られた。

 一歩進み出たのは、稲田だった。

「なんだ、あんた……」
「いや、ずっと聞いてましたけど、ケンさん……でしたっけ? 言ってることがちょっと違うんじゃないかな、って思ったもんで」
「あー、パンツマニアが何か言ってるー」

 ピアスの子がケタケタと茶々を入れたが、追従する者はいなかった。似非医者は邪魔をされて憤慨し、残りの男たちは何言ってんだこいつと白い目をしている。
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