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姦譎の華
第17章 17
「何が違うってんだ!」
「僕の見立てではですね、ええと、お姉さんは……」

 稲田が多英のジャケットへ焦点を合わせようと目を細める。襟に挟んでいる安っぽい名札には、店に入るときに決めさせられたニックネームが手書きされていた。

「たーたん? ……ま、このたーたんさんは、そんな感じの人ではないと思いますよ」
「じゃ、何だってんだっ。あんたみたいな奴に何がわかる!」
「わかりますよ。男漁りですよ、男漁り。SもMもぜんぜん関係ないでしょ。たーたんさんはね、ただヤリにきただけです。とにかくズコバコしたいんですよ。先輩だってそう思いますよね?」

 稲田が同意を求めると、気弱だった後輩が大勢の前で堂々と話すところを見せつけられていた島尾は、負けじと胸を張った。

「ああ、オケツといいオッパイといい、見るからにスキモノそうなカラダだしな」

 一所懸命に語ってきた持論を蔑ろにされた似非医者はカウンターを強く叩き、

「いい加減にしろっ。失礼だぞ、ここにいるのはお前らみたいな奴ばっかりじゃないんだ!」
「じゃセンセイ、本人に聞いてみたらどうだ?」
「あ、……ああ。みてろ……」

 絵に描いたような売り言葉に買い言葉、紅潮した顔が振り返り、天面に置いていた手を無断で取ってきた。

「気にすることはありません。ここでは女性を侮辱するような言動もルール違反なんです。安心してください、私が店に言って、今度こそこいつらを出禁にしてやりますから。常連の私が言ったら、すぐにつまみ出されますよ」
「……あの」
「かわいそうに思ってやる必要なんてないです。さあ、マナーのなってない奴らのことなんかほっといて、わ、私と、ふっ、二人で、し、真実のかい、かいら、かっ、快楽を……」
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