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姦譎の華
第18章 18
 感慨深く直上の種実を啄むや、驚くべき力で鼻下を持ち上げられた。雛先は続けて吸われるに備えヒクついているが、断腸の思いで小孔へと舌を戻す。

(お……)

 花唇は息荒く震えていた。イジワルしないで。きっと、そう訴えかけている。男たちを魅了してやまぬお高い秘書は、口から淫らな懇願を発することができない代わりに、こちらの口でオネダリしているのだ。

 もしかしたら、俺にはクンニの才能があるのではないか。

(……いや、ちがうぞ……)

 巧拙なんかではない。まごころの問題だ。

「……おい」

 花央にふくらむ白んだ零露を吸わずに、四つん這いで多英の顔の前まで進んでいく。隠している手を外してやると、涼しげだった瞳は潤み、こちらでも雫がこぼれそうになっていた。

「キス……、しようぜ」

 胸が締め付けられそうな佳容へ向けて囁きかけたが、そっぽを向かれた。

 もはやフロアにいた男たちだけが、仇敵なのではなかった。

 晩婚化、未婚化が進んでいるといっても、同年代の知り合いはほとんどが結婚している。中には年齢に焦り、誰でもいいから結婚したとしか思えないような奴もいる。婚活ブームなんてまるで無関係な話、こっちはとうの昔に諦めてるというのに、飲み代が安く済むから参加する飲み会で、家族はいいぞ、守るべきものがあると違うぞと、まるで結婚していることが偉いとでも言うかのように、自慢たらしい話をされてきた。

 貴奴らの前でこの女を紹介したならば、どんな気分になれるだろう。唖然、呆然。中には卒倒してショック死する奴も出てくるかもしれない。年下の超絶美人。悔しさのあまり、頑なに信じようとしない奴もいるかもしれない。まあいい、信じる信じないはお前らの勝手だけど、これ、俺のカノジョなんだ、こいつ、俺のカミさんなんだ──

「おっふ……!」

 想像しただけでマットレスにカウパーが散る。

 多英が社長室長と付き合っていることは知っている。だが、あんな上品な若造でいいのか? このカラダが満足できるのか?

 キスを拒んだのはおためごかし、恥じらいか、貞操観念というやつか、もしくは『美人すぎる秘書』としての体面が邪魔をしているだけだ。
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