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姦譎の華
第21章 21
 いい大人が乙女ぶって胸を疼かせたわけではない。すぐに切り返せばよかったのに、答えは喉からなかなか出ていかず、ためらっているあいだに胸の痛みが強くなっていく。

「多英さん、愛してるよ、とても」
「……」
 こちらの気も知らず、光瑠は重ねて伝えてきた。「……ありがと。私もよ」

 辛うじて答えてやっても、光瑠は電話を切ろうとはしなかった。同じ言葉を、聞きたがっているのはわかっていた。

「もう、恥ずかしいでしょ、こんなとこで。呼ばれてるから、切るね」
「うん……」

 切断画面になったスマホを傍らに抛ち、痛みが和らいでいくのを待った。溜息をつきたく息を吸い込もうとすると、肩が隣へと引き寄せられる。睫毛が降りゆく直前、いかにも粘つく分厚い唇が開かれていくのが見えた。

「ンッ……」

 舌が差し込まれると、あまりの臭いのきつさに咽せそうになる。歯茎まで舐ぶってくる貪欲さは、下等な獣そのものだ。電話をしている間じゅう、無骨な手は毛玉が作られそうなほどニットを揉みどおしだった。なのに、光瑠に穿たれた風穴が、肉実を捏ねられるごとに埋められていく。

「多英……キレイだ。本当にキレイだ」

 唇を離した島尾が、ソファを登って体を跨いだ。巨体に暗がりへと落とされ、腹からズリ落ちていたトランクスから活きり勃つ肉茎が取り出される。

 多英は自らニットの裾を胸下まで捲った。幹が谷間に触れると、脇を締めてバストを内側へと寄せる。縮れ毛が顔に迫り、狭間からニュッと頭を出した先端が首元のナローチェーンへしぶきを散らした。バストの中へ本体が引かれていっても、カリ首に染みついていた臭いが襟周りに漂い残る。

 二往復半、ゆるやかに擦り付けた肉茎は動きを止め、

「パ、パイズリしてくれ」

 今みたいにやるんだよ。垂涎して見上げる亀頭が、直接命じてきているかのようだった。
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