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姦譎の華
第22章 22
 持ち手紐付きの無地の紙袋。物を与えればヤラせてもらえると思っているのだとしたら、裏垢から全世界に晒してやるところだったが、以前好きだと教えてやったブランドのアイテムを性懲りもなく贈ってきたにしては、割と大きいし重みがあった。

「なんですか、これ?」

 足の上に乗せたまま中を覗き込むと、長細い箱が入っていた。側面の半分ほどが透明フィルムになっており、その窓からはビニールに梱包された物が見える。塞がれている部分にはコレの名称が書かれているらしいが、全く未知の言葉では何物なのやらさっぱりだ。

「お土産だよ。……何だと思う?」

 なんだそのクイズは。イラッときたが、えーなんだろー、ほんとわかんない、と困った笑顔で言葉を崩してみせると、男は運転席を一瞥してから、

(……マジかこいつ)

 ひそひそとした説明を聞くや、胸の内だけでなく身振りの上でもシートにドンと音を立てたかった。

「ね、すごいでしょ? 使ってみようよぉ。愛紗実ちゃんも絶対気に入ってくれると思うから」
「えー、むりですよ。……だってこんなの」
 愛紗実も声量を落とし、「おっきすぎて、挿らないと思います」

 前回ホテルに行ったときにもだいぶんヤバい奴だなとは思ったが、こんな見たこともない道具まで用意してくるとは。運転手に自宅の最寄りを伝えてしまったのは失敗だった。一緒に追いてきて、強引に中に入ろうとされてはたまったものではない。

「大丈夫。使い方は調べてあるから。ね?」
「えー、でもこういうのは、ちょっと困るかなぁ」
「おねがいだよぉ。愛紗実ちゃんと愛し合いたくて楽しみにしてたんだ。春コレ出たら愛紗実ちゃんに似合うジュエリー、どれでもプレゼントするからさぁ」

 ここまできたら可愛く御し易い女を演じ切ってやりたかったが、運転手に聞こえるよう、氏名社名つきで、こっぴどく詰ってやる案件ではないかと思われた。もしくは知能と財力は低いが、下心と筋肉だけは旺盛な男友達に心当たりがある。そいつへメッセージを打ち、タクシーを降りる場所に先回りさせておくべきか。
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