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姦譎の華
第22章 22
 目標はすでに路地を折れていた。見えていたのは、ほんの短い時間だった。
 見間違いだったのだろうか?

 いや、今の自分以上に、車から降り立った長身の女は、夜の雑踏の中にありながら断然の存在感を放っていた。それにこの自分が、認めたくはないが認めざるをえない、嫉視してやまない女を見間違えるなんてヘマをするわけがない。

 路地を折れると、大通りの賑わいからは一転、かなり頽れた街並みとなった。電球がクルクルと明滅する看板がちらほらとあるが、あとはシャッターを閉じたビルや小さなマンションがだんまりと並んでいる。

 いない。見失ったか……。

 一番手前の看板の脇にはウインドブレーカーを着た男、少し先にも外国人らしい二人組。一人歩きで踏み込むのはいかにも危険だったが、彼らの横を自転車の警官が通り過ぎていった。男たちへペダルを緩めることはなかったものの、さすがに、巡回中に女の悲鳴を聞いたなら急ぎ駆けつけるくらいの勤勉さは持っていると信じたい。

「お姉さん、いまどこのお店で働いてんの。お給料いくら?」

 歩み始めるや、看板の前に立っていた男がプライドに石つぶてをぶつけてきた。渾身の我慢をして無視をし、角ごとに路地を確認していく。区画の最後に行き着いて大通りに出てしまうと、隣の筋を使って折り返してきた。

 しかしどこにも、女の姿は見当たらなかった。

「お姉さんどうしたの。初出勤で自分のお店、わかんない?」

 同じ男に声をかけられた。二周目だ。

 変な三人組を見なかったかと尋ねたいが、当然、口をきく気にはなれなかった。どこかに飲みに行くにしても、こんな下衆い男がいる街に、あの女が行く店があるとは思えない。

 一人でいる姿を見たのなら、もっと色々な解釈を試みたのかもしれなかった。だが一緒にタクシーに乗ってきた男たち、あれは何だったのだ。およそ同乗できる資格なんてなさそうな、見てくれ最低レベルのオッサンたち。しかも付き従っているというよりは、左右から挟んで逃げ場を殺し、彼らのほうがあの女を先導しているように見えた。

 とはいえ、建物の中に姿を消してしまったのなら、探し出すのは至難の技だった。寒さも限界である。
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