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姦譎の華
第25章 25
 オッサンは、呼び方なんてどうでもいい、とか言ったが、べつに、どうでもよくはなかった。

 中学の卒業式に、母はやってきた。

 よその親たちと同じようにフォーマルな服を着て、保護者席にのうのうと座り、我が子の成長の区切りの儀式を見守っていた。証書授与で「ブス」ではない本名が呼ばれた時には、よく憶えていたなと呆れるほど、さも当たり前のように涙ぐんでもみせていた。

 その夜、オッサンも家にやってきた。
 卒業祝いの電子辞書を渡され、していなかった合格祝いの席も兼ね、いつのまにか母が用意していた食事をとらされた。

 そして──、オッサンの隣で、母は頭を下げたのだった。

 どうかしていたの。いろいろあって、言い訳にしかならないのはわかってるけど、本当に、どうかしていたの。

 もう泣いていた。

 しかし一切申し開きすることなく、母は離婚以来為してきた娘の扱いが、虐待であったことを認めた。その潔さを汲み取らず、おさまらぬ憤怒をぶつけてくるとでも思ったのだろうか、オッサンはすぐに、ママは病気だったんだ、と言った。ちょっとした病気だったんだ。風邪をひいたら寝てなきゃいけないように、無理をしてはいけなかったんだ。病気が悪さをして、君に辛い思いをさせてしまった。でも心の底では、子供を愛していたんだよ。ママも辛かったんだ。

 たしかに東京に越してきた夜、全裸で馬乗りになってきた形相はまさに病的だったが、ああやっぱりそうだったんですね、それで?、という気持ちにしかならなかった。咳鼻水が出て辛いから、物を盗みました。歯が痛くてたまらないから、人を殺しました。過ちには、理由がありました。いきなりそう言われても、卒業式で校長が述べた祝辞と同じくらい、胸の中の水面にはただの一つも波紋は立たなかった。

 そもそも、この時オッサンは、どんな気持ちで──より皮肉を言えば、どの面下げて母を庇ったのだろうか。

「……なんでこんな早くに来たの?」
「仕事が早く終わっただけだ。早く服を……」
「別に親子なんだったらいいでしょ?」

 全裸でチェアの前に立つ。

 オッサンが見つめてくる。生徒会長ではてんでだった肌が、急にゾワゾワとしてくる。見下ろす視界の下端で、胸山の頂が尖っていく。
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