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姦譎の華
第25章 25
 もし今、母も早くに帰ってきて鉢合わせをしたなら、どうなってしまうのだろう。全裸となった娘が、大事な大事な肉杭に、牝の穴を擦りつけていたとしたら──

(いっ……、あ……、すご……)

 地獄を想像すると、ドッと汁が迸った。このままではオッサンのズボンも無事ではない。

「……アレ、出して、オジサン。スーツ汚しちゃう。あいつにバレちゃう」

 謝罪をした日から、母は懸命に母であろうとしていた。家事もやるし、買い物もする。食卓では学校のことを聞いたり、将来について尋ねたり、テレビから流れてくる話題に触れたり、何とかして、娘と会話をしようと努めていた。しかし二人きりの日は全く返答をせず、オッサンがいるときですら母の発言は全て無視。すると母は悲しそうに、しかし文句を一言も言うことなく、食器を片付け始めるのだった。

「うあっ……、オジサンの、今日すごく、硬いよ……」

 母はもう、二文字の蔑称を用いてこない。このままマトモな親に、マトモな人間に戻るつもりのようだった。

 それはとてつもなく、憤ろしいことだった。心が狭いなどと言われる筋合いのない、全く当然の情動だ。

 だが、怒りのあまり自棄となり、素股なんかをしでかしているのではなかった。肉杭は鋭くそそり立ち、もしもオッサンが我を失って角度を変えてくれば、牝のぬかるみへ激痛とともに突き刺さってくるというのに。

「いいよ、オジサン。オジサンの好きなようにして。この先も、秘書にして、オジサンのオンナにして、ずっとずっと側に置いて」

 もしかしたら自分は、常に不幸な場所に、身を置いていたいのかもしれない。好きでもない生徒会長に股ぐらを舐められたのも、慣れてないところへ挿入されそうになったのも、きっとそのせいだ。そしておそらくは、母が一番大事にしている肉の杭と戯れているのも……。謂れのない蔑称で呼ばれ、どうにもならない血の繋がりを恨み、これらを手放しに嘆いていられる場所に立ち尽くし、自分はこんなに辛いんだ、こんなにも不幸なんだと、いつまでも、自分を憐れんでいたい──

 とめどなく、脚の間は潤い続けていた。
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