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姦譎の華
第26章 26
「よ、よしっ。もっと口開けろっ。……っ、歯立てるなよっ。おしゃぶりして、お、俺のザーメンを受け止めるんだっ」
「わ、わかったから……はや……、おむっ……!」

 ようやく肉槌が差し出され、頬張ることができた。

「おいババア、凄えな。よくそんなもん舐められるな」
「ら、らって……、オムッ、……ひゃ、ひゃぶれって……アォッ!」

 しかし愛紗実の猛威の前では、所詮は付け焼き刃だった。烈しい交接に、とても鼻呼吸では追いつかず、緩んだ唇の隙間から次々と無様な喘ぎが漏れていく。

「人のせいにしてんじゃないってば。ほらまたイクんでしょ? 私の見てる前でおもっきりイッてみろよ淫乱ババア」
「やっ……、ら、らめ……、ヒく……、ほ、ほんろにヒッひゃうっ……!」
「愛紗実さまっ……でで、出ますぅっ、ザ、ザーメン出ますぅっ、もう無理ですっ、あ、愛紗実さまっ!」
「バーカ。どいつもこいつもイッちまえっ!!」

 絶頂に差し掛かると、肺胞の全てが酸素を欲して口を離してしまった。直後から弾道が顔前をまっすぐに飛んで行き、煮え滾った汁で白線が何本も引かれていく。

(ああっ……こんなの……)

 嫌?

 では、またしても牡の吐瀉で顔面を穢されていながら、全身に爆ぜている肉悦は何なのだ。

「……ほら華村さん。おっきな声で言って? 今まで調子に乗ってすみませんでした、って」

 精臭と恍惚に意識が霞む中、睫毛に何粒も揺れる白滴の向こうから、愛紗実が冷酷に見下ろしていた。

 これほどの恨みを、彼女から買っていたのか。
 これほどまで、かつての罪咎は──

「──社長、お話が」

 多英は握ってきている敏光の上に、自らの手のひらを乗せた。
 もはや自分には、この人に抱いてもらう資格なんてなかった。

「……あの」
「退職願を出すつもりかい?」

 こちらから切り出そうと思っていたのに、何もかも敏光に先回りをされて詰まった。秘書としての言葉が見つからず、女としての言葉は喉を滞留し、沈黙を余儀なくされていると、敏光が軽く息をついた。
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