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姦譎の華
第27章 27
 自然というものは、形あるものに対しては必ず、崩壊の方向へ力を働かせる。たとえば自動車や機械の耐久検査なんかは、この摂理を応用したものだ。力が秩序の方向へ働くなんてことはあり得ない。もちろん、人間に対しても。君たちも例外ではないから覚悟するように。特に女の子、将来気に病む必要はないんだぞ。

 高校時代に物理を教わった老教師は、少しでも興味を惹かせたかったのだろう、いかにも面白おかしく話したが、残念ながら誰一人目を輝かせる者はいなかった。今の時代ならこんな教え方をしたら即刻クレームが入るのだろうが、その当時としても、決して耳触りの良い話ではなかった。

 けれども自分たちを白けさせていたのは、不快感なのではなかった。ただ、実感がなかったのだ。摂理が働いた結果、杖無くしては教壇に立てない老人にいくら諭されようが、やっと大人の形になった少女たちに、当事者の自覚を持てというのも難しい話だった。

 肩で息をついた多英は鏡の中と目を合わせたまま、トートバックから革輪を取り出した。顎を上げ、首へと巡らせる。金具の感触に背が震えるが、凶々しい太革がビジネススタイルに巻き付くと、鏡の中の女は大きな胸を更に膨らませた。

 摂理に怯える憐れな女を見捨て、特別応接室に赴く。

『ああっ……、あ、愛紗実さまっ! ま、また、イッてしまいますっ……!』

 ドアを開けるなり、大音量で嬌声が聞こえてきた。天井からスクリーンが降ろされ、ビルトインプロジェクタが動画を映し出している。さっきまで眺めていた鏡と同一人物の女は、髪を振り乱して手足から伸びる鎖を鳴らし、出入りするディルドに向かって自ら腰を揺すりつけていた。

『ちゃんとカメラに言ってからイケよっ、このスケベババアッ』
『はい……イ、イキます……スケベババアの、オ、オ×ンコが、イ、イぎっ、イキますっ……!』
 全開の股関節が突き上げられると、ディルドがすっぽ抜けて飛影が見えるほどの噴水が上がった。『うわっ……、きったないもんかけんなよ、このウソツキババアッ──』

 あの日、セミスイートでは、夜を徹して陵辱され続けた。
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