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姦譎の華
第27章 27
 もう眠い。愛紗実の他愛のない一言が、永遠にも思われた狂宴の幕切れだった。何もかもが終わった。月曜には軽蔑か、好奇か、とにかく数々の悪意に晒されることになるだろう──多英は意識を途絶えさせた。

「帰りが遅いから鑑賞会してたの。……おい」

 顎で指図された稲田が、長い鎖の緒を首輪のフックに嵌める。

 囚徒の印だった。

 週が明けても、何も変わらなかった。同じフロアのスタッフたちは、相変わらずの気惚れた眼差しで挨拶をした。秘書係で顔を合わせた愛紗実もまた、おはようございます、と、いつもどおりの会釈をすると、週末の出来事は幻だったのかと思わせるほど、ブリーフィングで周知事項を読み上げた。

 しかしその日の業務が終わると、愛紗実は中年たちとともに上司をホテルへと連行した。まるで太陽が昇ったらリセットされるかのように、暴威には寸分の陰りもみられなかった。そして自分も、四肢を拘束されて狂姦に及ばれていながら、何度となく性悦を極めた。毎日、終業後に収監され、動画を撮り始めたのは何日めからだったか、痴濫するあまり気づいていないだけで、初日からだったかもしれない。さっき流れていた動画も、昨日撮られたものなのか、二日前なのか三日前なのか、メインキャストでありながら皆目区別がつかなかった。撮影は島尾の役割だった。今も撮っている。この男のほうが、何日目のものなのか憶えているかもしれない。

「会社では、……やめてほしかったわ」
「あれれ、口のききかた忘れた? 定退日だからいつもと違う場所で気分変えてあげようと思ったのに、私の配慮、無駄にする気?」

 会社に残るように命じられたのは、今夜が初めてだった。とはいえ、場所が変わったからといって、伝えるべきことは変わらない。

「話があるの」
「話? 何なのいきなり」
「ええ。……もう、こういうことは、今日で終わりにするから」
「……。どういうこと?」

 スクリーン正面のソファに悠然と脚を組んでいた愛紗実が、婀娜めかしく引いた眉を寄せる。

「会社、辞めるの。さっき社長にもお伝えしたわ」
「……へえ、辞めるんだ」
「ええ。私がいなくなれば、藤枝さんも満足でしょう?」
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