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姦譎の華
第27章 27
 根元を支えていた手を離して地についた。前傾して背を反らし、上空を仰いで舌だけを差し伸ばす。

(はぁっ……)

 こんなモノに、口を触れさせる女が……いや、人間がいるだろうか。

 縫い目に沿って刮ぐと、口内に引っ込めた刹那にドッと唾液が溢れ出した。顎を引き、喉を通す。様々な老廃物の臭気が混然となって鼻へ抜け、それらが凝集して物質化した粘体は、味覚芽を刺すばかりでなく、こめかみをも痺れさせた。

「ウエッ……」

 多英よりも、愛紗実のほうがひどくえづいた。常に可愛らしさを標榜している彼女にしては人を幻滅させるような呻きにけしかけられ、再び幹へと吸い付く。頬ずりせんばかりに顔を巡らして亀頭の首周りを撫でると、まだ粘滓は残っているというのに、呻きが聞こえて肉茎に額を叩かれた。眉のあたりから糸が引いてプツリと切れたのを認めても、多英は島尾を詰ることなく、拗ねた眸色で見上げて亀頭を窘めるように唇でつかまえる。

「も、もうだめだっ、あ、愛紗実……さまっ。だ、出していいかっ、……いやっ、だっ、出させてくれ、たのむっ!」

 たちまち、島尾が悲鳴を上げた。

 口だけでなく腹も抑えて丸くなっていた愛紗実が、こみあげる嘔気を呑み込みながらコクコクと首を縦に振った。多英はそれを横目で確認し、ヒップを浮かせて膝立ちとなると、真上から深く被せていく。

「おおおっ、た、多英……、多英ぇっ!!」

 頬張ったまま、瞬きで頷いた。肉茎が活魚のように暴れ回る。ただ放置されていただけではない、毎夜の痴態を見せつけられていながら獄につかされていた先端から、凄まじい勢いで濃汁が噴き出した。

「ンッ……、……、ン……、ン……」

 脈動のたびに鼻声を漏らし、冠の溝を絞めつけて口内の圧を上げてやる。粘体の腐臭が充満していたところへ生ぐさい精臭も混ざり込み、塩気、苦味、他にもある、とにかく不味である牡液で口内を汁浸しにされていく。頬を窄めてゆっくりと吸い上げ、尿道から最後の一滴まで搾り出し、音を立てて傘を唇から外すと、少しでも顔を前に傾けたら溢れてしまいそうで、おとがいを見せたまま数回に分けて嚥下した。
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