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第27章 27

　何の信念もあったものではない。

　ならばまた、変節させてやればいい。まだ自分は、崩壊してはいない。この肉体をもってすれば、不可能ことではない。バストと趾に感じる下劣な硬さが、企みが成功しつつあることを物語っていた。愛紗実を介さなくても、淫欲を存分に満たすことができる。そうわからしめてやれば──

　愛紗実はどうなる？

　彼女もまた秘書だった。すなわち容姿はＡクラス以上、女に相手にされないのに女好きという悲劇を背負う男たちにとっては、肉欲を満足させるに充分な相手だろう。若さを誇り、男でも女でも、自分に劣る者はとことん見下す性分は、むしろ野獣たちの嗜欲を刺激するにちがいない。もしも愛紗実が、幾日か前に自分がここで受けたように、底辺男たちの下欲の慰み物にされたならば、そのプライドの高さは、彼女にとってとてつもない足枷になるはずだ。

（光瑠くん……）

　浅ましい企てだとは思う。

　しかし敏光とは決別してしまった。
　罪障を重ねてでも、光瑠が帰国するまでに、方を付けなければならかった。

　彼を失いたくはない。そして、何も、彼に知られてはならない。

「……ねえ、あなたたち……」

　多英が媚びた顔つきを装い、二人に持ちかけようとした矢先だった。

「何をしてるんだ？」

　天啓のような声が聞こえてきた。
　二人に身を預けたまま、視線を移し──愕然となる。

　そこには光瑠がいた。