この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
姦譎の華
第28章 28
「だからこういう連絡は今日で最後にしてくれ。頼む」
「ちょ……、ちょっと待ってよ先輩。考え直して」
「愛紗実のほうこそきちんと考え直せ。嫌な男に近づいたりとか、嫌なのに抱かれたりとか、もうそんなことしなくていい」
「なんで? 私、先輩の仕事がうまくいくようにしてあげてるだけなのに」
「……ごめん、親父が着いたら迎えに行かなきゃならないんだ。それじゃ」
「待って、まだ──」

 メインウインドウが真っ黒になる。切断マークが表示され、光瑠のアカウント表示もオフラインとなった。

 ──誰も、動かなかった。

 やがて愛紗実だけが、洟を啜り、ゆっくりとソファから立ち上がった。ポケットから取り出したハンカチに目元の雫を吸わせる。それからスマホに自分の顔を映し、左右を向いてメイクの具合を確認した。乱れてしまった髪を入念に手櫛で整え、身繕いを終えると、スマホに何かを打ち込み始める。

 そのあいだ、愛紗実は一言も喋らなかった。
 彼女が喋らなければ、誰も喋らなかった。置き時計の秒針すら、負うている役目を放棄するかのように、彼女に気を遣っていた。

「……ね、華村さん」
 ようやく入力を終えた愛紗実は、いっぱいに息を吸い込み、「見た目がキレイだとさ、そんなに得するもんなの?」

 不安定に震わせ、吐き出した。

 返事ができなかった。

 愛紗実からは生命感が感じられず、もはや魂は彼方へと喪失してしまって、残されているのは中身が空洞の脱殻ように見えた。天空から操られるように一歩々々近づいてくる。スカートが乱れないよう斜めに膝を屈し、鎖の緒を拾い上げると、

「よくも……」
 右手の甲に何重か巡らせるあいだに、何かが、彼女の中を満たしていった。「よくもまた、……騙してくれたなっ!!」

 いや、取り憑いたのだ──

「……し、知らなかったのよ……、あ、あなたと、み、光瑠くんが……」
「自分の部下の出身大学も知らなかったのかよ。キョーミなかったのか? あ?」
「そ、そんな……、その、……ち、ちがうわ……」
「ま、もうそんなこと、どーでもいいけどなっ!」
/278ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ