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姦譎の華
第29章 29
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 家でテレビを観ていたら、未婚の母だとか同性婚だとかを取り上げたドキュメンタリーをやっていた。観たくて観ていたのではない。ニュースを観たあとテレビを点けっぱなしで風呂に入り、出てきたら始まっていて、流れで漫然と眺めていただけである。

 もしも、このあとに起こることがわかっていたならば、もう少し真剣に観ていたのかもしれない。

 母は朝から出かけていたから、とても穏やかな一日だった。このまま帰って来なければ、素晴らしい週末だったと、晴れやかな気分で月曜が迎えられたことだろう。だが残念なことに、玄関の鍵が解かれる音が聞こえてきた。返事をしないとわかっているくせに、帰宅の挨拶も聞こえてくる。

 リビングのドアが開き、母の後ろからオッサンまでもが現れたものだから、より不愉快になった。ご飯食べたの、と尋ねられるが、何も言わずにテレビを消してソファから立ち上がる。

「推薦決まったんだってね。おめでとう」

 オッサンが祝いの言葉で引き止めてきた。

 先週、合格通知が届いた。ずっと高成績を維持してきたし、学校も太鼓判を押してくれていたので、ほぼほぼ確実だと自分でも考えていたのだが、唯一心配されたのが高額な入学金と授業料だった。その危惧も、今のひとことで解消されたから、

「ありがと」

 二重の意味で礼を述べた。

 誕生日も近いし、クリスマスもあるし、お祝い尽くしね、プレゼント何がいいかな。ガン無視されているというのに、母は殊更にはしゃいでオッサンの肩に手を添えている。

 18の誕生日プレゼントは、もう決まってるよね。

 母の前でオッサンに言ってやったら、どんなことになるだろう。しかしこの時は破滅への誘惑よりも嫌な予感のほうが強かったから、とっととその場から退散しようとすると、

「あ、待って」
「ああ。……話があるんだ」

 今度は二人して引き止められた。

「……まだあるの?」

 オッサンに返事したつもりだったが、母にも応えた態になってしまって軽く舌打ちが出た。ダイニングテーブルを勧められる。このまま部屋に入ってしまっては、バツの悪いあまり逃げたことになる。あからさまな溜息をついて椅子を引くと、正面にオッサンが座り、その隣に母がついた。憶えのある構図だった。

「実は……」
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