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姦譎の華
第31章 31
 もういい歳である。エロ動画の巨乳女を辱める男優になりきって、毎日自慰を行なってきたが、いざとなれば二日三日あいだが空いたって平気だ。一ヶ月前ならば、そう胸を張れたのかもしれなかった。

 しかし肉茎は、生身の女陰の感触を、しかも最上級の女の味を、芯から憶えてしまったのである。そうでなくても、触ることはできるが触らないのと、触りたいのに触ることができないのとでは、まるで事情が異なった。ローテーブルで牝穴を披露する姿や、倉庫でバストを弄ばれる姿、何にもまして、プレイルームで己が肉棒で絶頂を果たし、自らキスを求めてきた姿。少しでも油断をすると、頭の中に甦ってくる。なのに勢いよく血潮が股間に集まるや、すぐに頑丈な金網に痛めつけられるのだ。

 そんな状態なのに、毎夜愛紗実の虐戯に付き合わされた。カメラ越しの映像になるべく見入らないよう努めても、ディルドで抉り回される嬌声は部屋に谺響し、肢体からは汗蒸した芳香が立ち籠めた。網膜だけではなく、鼓膜にも鼻奥にも淫らな名残は居座って、自宅で一人、何とかノータッチで射精できないものかと、女になったつもりで贅肉の胸を揉みまくってみたが、精鬱は尿管でぐるぐると渦巻くだけで、一滴とて洩らすことはできなかった。

(お、おぉっ……)

 スーツの股がみに先端をヌルヌルと擽られつつ、多英を支え横断歩道を渡らせていく。向かう先には、愛紗実が腕組みをして待っている。そこへ連れて行けば、この美しい女が、生まれて初めてセックスをした女が、どんな目に遭うのかわかっていながら──

「稲ちゃん、急げ」
「は、はい……」

 稲田は多英の首から垂れる鎖を巻き取って、後ろから背中を押していた。返事はかつての先輩に対するものに戻ってしまっていた。もはや奴隷AとかBだとかは、拘泥するべき序列ではなくなっていた。

(ああ……、なんとお美しい……)
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