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第31章 31

　自分は、この女に何と言わしめたいのだろう。

　社長秘書の座を奪ってすみませんでした？　世の中他にもたくさん秘書はいるのに、イキってすみませんでした？　おそらく、そんな言葉が聞きたいのではなかった。

　……好きな男を奪ってすみませんでした？

　自分はいま、自分として最も嫌ってきた女になっている。誰が見ても、男に執着するあまり、相手の女に報復をしている。

　だがそれでも、どうしても肯んぜられないものが、胸焼けとなって喉元にせり上がっていた。

　たしかに、この女の秘密を知った時、即刻明るみのもとに晒し、破滅させてやりたかった。光瑠を取り戻すことができると思った。

　しかしハプニングバーの覗き部屋では、実際に事をなす二人の中年男も、見守るギャラリーたちも、そして何より自分自身も、その場にいる全員が、凛としていた女が乱れに乱れる様に呑まれていた。それは二人を使ってホテルにおびき出した時も、変わらなかった。昔の玩具を突っ込まれ、ディルドで穿ち尽くされ、汚らしい白濁で顔面を汚されていながら、『美人すぎる秘書』の威光が色褪せることはなかった。

　そして今日、この女が何を考えていたのか──肉棒についた穢物を口にし、構えられた大口へ向け排泄をしている姿を見せつけられて、あまりの気色悪さと気迫のせいで、止めることができなかった。しかし篭絡されていく男たちへ向けられた顔つきにとてつもない邪心が読み取れて、とっさに入れた光瑠とのオンライン会議が間に合った。ああでもしなかったら、自分はどうなっていたことだろう。想像するだに背すじが凍る。

　嘘つきだとか、淫乱だとか、そんなことではない。
　この女が持つ邪悪な一面を、……誰も知らない。

「……チビ、片足持ち上げろ。ブタはしっかり支えてろよ」
「や……」

　稲田が片脚を持ち上げようとすると、多英が足を踏みしめた。抗う理由があるのはわかっている。

「逆らうの？　胸、灰皿にされたい？」

　なおも抗うつもりなら、躊躇なくバストへ押し付けてやるつもりだった。多英もラッパが吹かれることはないと思い知っているのだろう、稲田が地面からパンプスを浮かせると、それ以上の抵抗は見せなかった。