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姦譎の華
第32章 32
 胸が大きいことを自慢としてきたが、形としてどうなのだろう。最も成長した時期に、体に合わない下着をつけることを余儀なくされた。足が長いことを誇ってきたが、背が高いとどうしても体重は重くなる。こうして身を伏せていると、どうにもお腹の肉が重いようにも感じる。そもそも全体のバランスとしてどうなのだ。

 一旦そう思ってしまうと、全ての辻褄が合っているように思えてきた。

 入学した日に皆が自分を見に来たのは、なんだかデカい女がいるぞ、やたら胸の大きな女がいるぞ、それだけのことだったのではないだろうか。実際、可愛いと言ってくれた男たちといえば、騙して非常階段に連れ込み、自慰を見せつけてきた男。足を開かせて秘部を舐め、濡れてもいないのに初体験を済まそうとした生徒会長。射精という目当てがあったからこそ、可愛い可愛いと持て囃したのではないだろうか。その証拠に、昨日フラフラと夜道を冒険している女子高生には、誰も声をかけてこなかった。いつも肉杭を扱き、口に咥え、素股で扱いてやっていた人からは、一度でも可愛いと言われたことがあっただろうか。

 実は、大したことがない──

 二文字の蔑称を使ってくる母に、自分は優等であることを恃みとして刃向かってきた。鏡は見たことがある。悪くない顔をしていると思う。しかし、偏差値40の人間を50の人間が嘲笑う。まるで偏差値70くらいはあるかのように。母が見るも醜い男を──自分より確実に醜い者を選び、キレイでステキでキモチイイ女になっているとおり、自分も、また──

「いく……いかせてっ、狂わせてっ!」

 どこまでが思い込みで、どこからが現実だったのだろう。

 ただし確実なことがあった。
 母は、壊れたのだ。自分が、壊したのだ。

(あ、私も、いく……)

 美しくあることは、生きていく糧だ。
 美しくならなければならない。そうでなければ、母を壊してしまった意味がない。

 どうかしていていましたでは、もう済まされない。










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