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姦譎の華
第33章 33
33


「ねー、さっきから何回も鳴ってるよー。出なきゃマズいんじゃないのー?」

 愛紗実が眼前にかざしてきたスマホには、母の施設名が表示されていた。粘り強く鳴らされている。

 だがゆっくりと、多英は首を振った。

「……そお? ま、本人がそう言うなら、別にいいんだけど。ちゃんと言ったからね、後んなって文句言わないでよ?」

 愛紗実が本気で電話に出させようとしていたかは疑わしい。

 人工島の隅にある公園は、海岸に面して一直線の遊歩道が敷設されていた。すぐ対岸は空港の一角で、何機かの飛行機が静かに羽を休めている。風に揺らめく水面に照明が乱反射し、もの寂しくも幻想的な寒景を創り出していた。

「えっ……、なに……」

 女の子の怯えた声が聞こえてくる。

 多英は首輪から垂れる鎖を敷石の舗装に鳴らし、身を寄せ合っていたカップルのそばを四つん這いに進んでいた。頭には新たな革具が巻きつけられ、金属製のリングを咬まされている。強制的に開いた口からは左右へベルトが伸び、頬で枝分かれして本線は首へ、分かれた帯は鼻梁の両側から眉間で一本となり、脳天を巡ってしっかりと結ばれていた。これでは電話に出られるわけがない。

「警察、呼んだほうがいいかな?」
「いや、エロ動画かなんかの撮影だろ。普通に女の人もいるし」
「あ……、ほんとだ」
「映っちゃったらヤバい、行こう」

 ムードを台無しにされた二人が柵を離れる。すすんで場を去ろうとした彼氏だったが、肩を抱いた彼女に悟られぬよう、垂れ揺れるバストや、ゴムのショーツが食い込むヒップに目線を走らせていた。大人しそうな彼女はというと、眼差しを怯えから強い軽蔑へと変えていた。

「……あの女の子の顔、見た?」
 愛紗実がペットボトルのキャップを捻りつつ、前に回りこんで行く手を阻んだ。「めっちゃ引いてたよねー。かんっぜんに汚いモノ見る感じだった」
「アー……」
「なにそれ。ぶっさいくな顔」
「エァ……」

 しゃがんで頭のベルトを引き、絞め具に歪められた顔を間近に覗き込んでくる。口内に溜まった涎が、声を発するたびにリングの縁から顎へと伝い落ちた。
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