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姦譎の華
第33章 33
 それを無視して……一人娘は、卑猥な下着姿で、頭に面妖な絞め具を嵌め、夜の公園を這っている。今しがたショーツを身に着けたまま、四つん這いで排泄を終えたところだ。

 我ながら、正気の沙汰と思えない。
 こんな娘を知ったら、母はどう思うことだろう。

 見舞いに行っても、目の前に立つ女が我が子だと認識してくれなくなってから久しい。母にとっての娘は、遠い遠い昔の少女の姿のままでいるのだ。

 願わくば、そのままで、命を終わらせてやりたかった。
 これが今の、あなたの娘さんの、本当の姿なんですよと知らしめるなんて、あまりにも残酷だ。

 流し切ってからも、多英はしきりにヒップを揺らしていた。肌身の中で唯一塞がれているゴムショーツの中は火を噴きそうな熱が籠り、襞壁が肉の繋がりを求めて荒れ狂っていた。

「おい、起きろよババア」
「ウ……」

 愛紗実が遊歩道に転がっていたペットボトルを拾い上げ、余りを高いところからヒップの頂点に注ぎかけた。冷水が背中を流れ、うなじの両側にまで垂れ落ちてくる。

「あ、愛紗実さんっ……、もうやめてくださいっ!」

 起き上がるどころかカチカチと震えていると、男の子が取り縋った。

「どうしたの? 洗ってあげてんじゃん。汚いから」
「い、いやっ、こ、こんな寒い中で裸で、……し、しっ、死んじゃいますよっ!!」

 愛紗実は何を言われているのかわからない、という表情で小首を傾げている。

 多英もまた、まだ辛うじて正気の側にいた男の子の、ここまで誰も口にしなかった言葉を聞き、ようやく気づかされた。

 自分は今、とても死に近しいところで、淫らに悶えているのだ。
 なるほど淫熱が凄まじいのも納得がいく。北風が冷水の通った跡を舐めてきても、表皮は寒慄しようが身芯を灼く焔は全く衰えてはいない。

 もしかしたら母も、こんな愉楽の中にいるのだろうか。
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