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姦譎の華
第34章 34
 かけた鎌にまんまと引っかかってくれた男に報いてやろうとした矢先、ヒップの割れ目に熱い息がふりかかった。多英とは天地逆に寝そべり直した稲田の舌が、尾てい骨を滑り降りて皺口へと着地した。これまではこじ開けてきた禁戸の錠が予め外されていたことがわかると、喜び勇んで捻り入ってくる。

「うんっ、あっ……くすぐったい」

 何度も舌に穿たれてきたが、初めて壺裏そのものに直接の愉悦を感じた。そうなると、まだ賞翫されていない唯一の場所が不満と期待でもどかしくなり、

「ね、稲田さん」
「はっ、はいっ……」

 名を呼ぶと、感激ひとしおの声音で即座に返事がある。

「指で……、してもらえないかしら」
「ゆ、ゆゆ、指ですか?」
「いや?」

 片膝を折って立て、たじろいでいるだろう稲田のすぐ目の前で、陽の差した峡谷に蜜豊かな牝花を咲かせた。

「んはっ……、はあぁ、た、多英……さまあ……」

 指先が涎の滴る皺口をなぞり、もう一方の腕は持ち上げられた太ももへしがみついたかと思うと、秘割に湿り切った息がふりかかる。

「ンッ……」

 しかしすぐに、多英はピリッとした痛みを会陰の一角に感じて鼻声を漏らした。

「も、ももっ、申し訳ありませんっ、い、痛かったでしょうかっ」
「……いいえ。ちょっと、傷が滲みただけ」
「傷……ああっ……、こ、こちら、でしょうか。ああ……、ああ……」
 ジュクジュクと舌がそこを撫で、「あふ……、こんな……、こ、こんな、あってはならないことが……、んぐ……、どうか……どうかお許しを……」

 稲田がやったわけではないのに、絹地につけられた微瑕を悔やんで必死に舐め回している。浅くはあっても、生温かい唾液が浸されると熱く滲みた。

 ただし、心地よい痛みだった。生きているからこそ、感じられるものだった。

 自分は、生きている──
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