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姦譎の華
第1章 1
普段、あんなにも自信ありげに振舞っているこの女でも、スカートを捲られて下着を丸出しにされたうえ、もう一人の男に背後から迫られようものなら、腹底から湧き起こる口惜しさを抑えることはできないのだ。
自信──
目の前の女の凜乎とした姿は、自分が横柄な言動を撒き散らすことで満足させている虚栄とはまるで異なる。そう思われてならない。
島尾とて、周囲の者が自分を持て余し、疎んじ、軽んじていることは、よくよく感じ取っていた。特段の知識も技能もない。したがって仕事はできない。かといって、ずっと年下の同僚からの指示・指導を唯々諾々と受け入れられるほどの器量も持ち合わせてはいない。
会社でだけではなく、キャバクラに飲みに行った時すら同様だ。ついてくれたキャバ嬢をキレさせたうえ、出禁になってしまった店は数多い。電車の中でも見ず知らずの者とよくトラブルになるし、警察の世話になったことがないのが不思議なくらいだ。
それにひきかえ、この女の自信が何に支えられているかというと、人の目を惹きやまぬ、群を抜いた麗姿に他ならなかった。
だいたい女という生き物は、男以上の優遇をされている。見てくれが良ければ良いほど、いや、女であるというだけの女であっても、男であるというだけの男に比べていかに救われていることか。
不埒な香気を漂わせているこの女は、誰よりもその恩恵をあずかっているにちがいなかった。粒石のイヤリングが揺れる耳朶から続く顎も、頬丘の丸みと向こうの鼻梁の傾きも、空中に最も麗しく引くとしたらここしかないというラインを正確に辿っている。喉から襟内へと吸い込まれている輪郭も同じ、この様子では衣服の中に仕舞っている起伏もまたしかりだろう。
だからこそ背すじを伸ばし、俺より高い位置に腰を置き、真後ろから迫られてなお顔を逆に背ける程度で、背中へ向けて力いっぱいの侮蔑を放ってきやがる──
自信──
目の前の女の凜乎とした姿は、自分が横柄な言動を撒き散らすことで満足させている虚栄とはまるで異なる。そう思われてならない。
島尾とて、周囲の者が自分を持て余し、疎んじ、軽んじていることは、よくよく感じ取っていた。特段の知識も技能もない。したがって仕事はできない。かといって、ずっと年下の同僚からの指示・指導を唯々諾々と受け入れられるほどの器量も持ち合わせてはいない。
会社でだけではなく、キャバクラに飲みに行った時すら同様だ。ついてくれたキャバ嬢をキレさせたうえ、出禁になってしまった店は数多い。電車の中でも見ず知らずの者とよくトラブルになるし、警察の世話になったことがないのが不思議なくらいだ。
それにひきかえ、この女の自信が何に支えられているかというと、人の目を惹きやまぬ、群を抜いた麗姿に他ならなかった。
だいたい女という生き物は、男以上の優遇をされている。見てくれが良ければ良いほど、いや、女であるというだけの女であっても、男であるというだけの男に比べていかに救われていることか。
不埒な香気を漂わせているこの女は、誰よりもその恩恵をあずかっているにちがいなかった。粒石のイヤリングが揺れる耳朶から続く顎も、頬丘の丸みと向こうの鼻梁の傾きも、空中に最も麗しく引くとしたらここしかないというラインを正確に辿っている。喉から襟内へと吸い込まれている輪郭も同じ、この様子では衣服の中に仕舞っている起伏もまたしかりだろう。
だからこそ背すじを伸ばし、俺より高い位置に腰を置き、真後ろから迫られてなお顔を逆に背ける程度で、背中へ向けて力いっぱいの侮蔑を放ってきやがる──