この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
姦譎の華
第7章 7
 しかし今日会わずに黙って行方をくらませればいいものを、学校へ滞納しているのをはるかに上回る額を差し出し、小学生に向かって頭を下げてきた父を、親として頼る気も、罵る気も失せ果てた。誰だこのオッサン。頼んでくれたトーストを平らげて胃が満たされると、目の前の男の人は、憐れで滑稽な、関わりを持っていることすら我慢ならない人へと豹変していた。ここで逃がしてしまっては、後々こちらが損をすることになる。しかし目の前の出来事を直情抜きに俯瞰することは、当時の自分にはまだできなかった。

「お前の幸せを願ってるよ。お前は……、あんなお母さんみたいになるんじゃないぞ」

 最後に残した言葉は、前半は嘘、後半は本心だろう。

 家に戻って渡された金を隠し、居間の座卓で勉強をしていると、まだ日付が変わっていないというのに母が帰ってきた。

「おかえ……」

 後ろからもう一人現れて言葉を切る。

「……え、おい」

 向こうは向こうで、スーツ姿のいかにもなサラリーマンのオッサンは、誰もいないと思っていたのに自分の存在を見つけて驚いていた。

「いーのいーの、上がって?」

 母は酔っていた。仕事終わりはだいたい酔っている。いつもは酔うと接しづらさが増すのだが、オッサンと一緒だとご機嫌だった。

「はやく飲み直そ、ね?」
 ノートを広げている座卓へとビニール袋が置かれ、「あっちの部屋でやりなさいよ。邪魔」

 ご機嫌なのはオッサンに対して限定らしく、見下ろす母の声音は低く、拒絶を許さないものだった。勉強道具を集めて隣の部屋へと向かおうとすると、

「ふすま、開けないでよ? てかムダに電気使わないでとっとと寝て」

 追加で背中へと言い放たれる。

「……あんたの娘か?」

 他にどんな可能性があるというのだろう、オッサンが訊ねた。

「そうなんだけど、ブスでしょ? やんなっちゃう」
「そんなことないぞ。あんたにけっこう似てる」
「ほんとやめて、全然似てないから。父親似。あのクズに似たからブスなのよ。もういいじゃんそんなこと、ね、飲も。ね、ね?」
/278ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ