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姦譎の華
第8章 8
「……じゃ、さっさとしたら?」

 多英は衣服を整え終えた手を、腰骨のあたりに置いた。片足を心持ち前へ出して顎を引き、背をまっすぐに伸ばしてみせる。

「ず、ずいぶん積極的だな」
 尊大な態度に島尾はたじろぐも、「おい稲ちゃん、交代だ」

 気を取り直して促すと、電気が通ったかのように起き上がった稲田がそそくさと背後へと回っていった。正面からは涎を袖口で拭った手が、せっかく整えたシャツのボタンへとかけられる。

「自分で脱ぐわ」
「女ってのは、脱がせてもらうほうが興奮するんだろ?」
「そんなわけないでしょ? 本当、頭──」

 何度伝えてやっても忘れてしまうようだから、同じ言葉で詰ってやろうとしたところで、喉が詰まった。ホックを外されたスカートがスルリと足元へ落ち、外気が下腹を舐めてくる。

「はぁっ……、す、素晴らしい御々脚ですぅ、華村主任……」

 シャツの裾から伸びる脚の裏側を、稲田の粘りつく視線が走り回った。破いてしまわないよう、丁重にストッキングが下ろされていくのとは対照的に、ボタンを外し終えた袷が遠慮なく開かれ、袖に残ったシャツが万歳をさせられてキャミソールごと取り払われていく。

(……くっ)

 二人はしばし、息を飲んでいた。

 島尾はレースに飾られたバストを凝視している。奇っ怪な溜息がふくらはぎのあたりにかかるから、稲田はかなりのローアングルから下肢を鑑賞しているようだ。

 前後上下、逃げ場のない卑欲の視線の中で下着姿で立っているのだから、本能は、背を丸めて自身をいだき、胸元と下腹を隠せと指図してくる。しかし相変わらず窓はこちらを向いており、世が褒めそやす女秘書の見事なボディを克明に映し出していた。

「く、くそエロいオッパイだぜ、ったく」
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