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姦譎の華
第8章 8
 島尾がふくらみの裾野へ両手を添える。さっさと脱がしにかかればいいものを、また、薄汚く黒ずむ指先を沈み込ませてくる。何ミリとない薄い上衣が無くなり、触れる手の向きが左右反転したにすぎない。圧迫感は変わらないか、むしろ先ほどよりも控えめだろう。しかし恋人でもここまで執拗には触らせないのに、気色悪く茹だった面を隠しもせず好きなようにバストを歪められるのは、触覚がどうこうという話ではなく、耳先までもが熱くなった。

「う……」

 結んでいた唇が緩む。
 親指が左右同時に、ブラカップの上から尖端を弾いてきた。

 脱衣しているあいだに安んじていた雛先は、再びネチッこく弄われ始めると、たちまちそそり立っていった。島尾は分厚い唇に涎の泡立つ舌を舐めずらせ、勃ちあがった突起を倒しては離し、再度捉えてはクルリと回してくる。

「へへっ、デカいくせにビンカンなようだな。さっそく気持ちよくなってきたか?」

 緊張によっても、そこは固くなってしまうものだ。

「……」

 やっぱり頭がおかしい。
 あらんかぎり恬淡と言いたいところだったが、不規則に弾いてくるから、その瞬間に喉が詰まるのを聞かせたくはなかった。

「じゃ、吸わせてもらっていいっすかね?」
「……は?」
「だからよ、社長秘書様のご自慢のオッパイ、チュウチュウさせていただいていいですか、って訊いてんだ」

 耳を疑う多英の目の前で、下品かつ無礼に問いかける赤紫の唇は、薄皮の逆剥けた表面が斑に濡れ照っていた。こんな醜猥な器官へ、一部分たりとも身を預けるなんてありえない。

「……くっ」

 両の肩紐を指がくぐり、糸を引いて半開きになった唇が近づいてくると、反射的に押し返そうとした腕が、逆に後ろへと引かれた。ヒップと脚の付け根が為す空間に、じっとりとした湿気が充満する。
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