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姦譎の華
第9章 9
 多英はバッグを探した。

 腹肌どころか、腹奥もが汚汁にまみれていた。こうなってから拭き取っても何ら意味はないことくらい、わかっている。理屈ではなかった。不慮の受胎を恐れたというよりも、不浄の粘液を即刻、一滴残らず払拭しなければならない強迫が、姦濁直後の体を動かしていた。

「え──」

 視界が、暗みに覆われる。

 ……誰?

 頓珍漢な疑問とともに影の元を見上げると、島尾の肉茎は腹を押し上げんほど垂直に、怒張を浮かべて脈打っていた。

「もう……、終わった……ん、でしょう?」

 稲田は一分とて持たなかった。つまり島尾が暴発してから、幾時も経っていない。もう回復したのか──いや、萎えていないのだ。

「俺はまだヤッてねえ!」

 突きつけられた現実が信じがたく、覆い被さってきた島尾の体重よりも困惑によって、みたび多英の上躯は倒れた。

「お……、おらぁっ!!」

 白濁が中へと押し返される。稲田ほど、最奥は圧されなかったが、稲田より、肉壁は拡げられた。

「どうだっ、い、挿れてやったぞっ……ど、どうだっ、みっ、みたかっ……、みたかっ!」

 ウエストをがっちりと抑え、一打、また一打と、復讐を果たしているかのように力任せの打突を仕掛けてくる。稲田の残溜が潤滑となって、やはり痛みはない。だがとりもなおさずその感触は、あの不浄の滓をまとった首回りが、粘膜に直に擦り付けられているという印でもあった。

(ぐっ……)

 白滓の存在を思い出すと、体が裏側から糜爛していくかのようだった。薄目を開けると、肉山のような男の隣で、草紙に描かれた餓鬼に似た男が牡牝まぐわう場所を見つめていた。股間では満緊に張った肉槌が脈動するたびに頭から白んだ汁を垂らしている。
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