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姦譎の華
第9章 9
「本当に、大丈夫です」
「大丈夫じゃない人ほど大丈夫と言うもんだけどね。今日、外出の予定は?」
「はい、十四時より、五明パートナーズ正田様ご招待の内覧会がございます」
「表敬か。じゃ、それは藤枝君でもいいな」

 敏光は冗談を言っている風ではなかった。そしてまた、藤枝君「でも」と言ってしまったことを、失言とも思っていないようだった。

「どういうことでしょうか?」
「いや、ここのところ忙しかったし、昨日も遅かったからね。すまなかった。今日は休んでいい」
「ですが……」
「内覧会の随伴なら、私でもやれます。どうかお休みになってください」

 口を挟んだ愛紗実を向くと、青白い炎が炙り出た笑顔を貼り付かせていた。私、でも。やはり聞き逃すはずはない。

「でも藤枝さんも──」
「大丈夫ですよ、私のほうは」

 明らかに、「若いですからね」と付け足したげな様子だった。










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