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姦譎の華
第12章 12
「いっ……」
「大人しく揉ませろ。誰かに見つかりたくないだろ」

 自分なんか一着こっきりしか持ってないが、さすがの社長秘書はスタイルに合わせて選べるだけあるらしく、今日はブラックのトレンチコートだった。ボタンはしっかりと留められており、ベルトも高い位置で結われている。ここへ来るにあたっての、せめてものガードのつもりなのだろうが、鎧でも着ない限りは無駄な抵抗だ。

 島尾は堂々ともう一方の手を山裾へ当てがった。片側をひと揉みしたらもう一方、そちらを二度つかんだなら元のふくらみを三度、回数と握力を増やしていく。密度の高いコットンギャバジンは伸縮性に欠けるため、直揉みよりも劣った手触りだ。しかし身を背けようとするのを力で押さえつけ、悔しげに眉を歪める様子を間近に眺めながら、思うがまま、ひとしきり揉んでやるのは何とも痛快だった。

「どうだい。モミモミされると昨日のカイカン思い出してきちまうだろ?」

 昨日と変わらない、いやそれ以上の快感を覚えているのは、むしろ自分のほうなのかもしれなかった。

「っ……、……バカなの?」

 一方の手は自由なので、もう一発平手が飛んできてもおかしくはない。しかし腕はダラリと下げられたままだった。この女はもう、物理的な抵抗は諦めて耐え抜くことに決めたようだ。ならば遠慮してやる道理はない。

「ああ、俺はおバカちゃんだからよお、調べてやんなきゃわからないんだよっ」
「ちょっ……」

 左右の胸乳と戯れていた手をいきなり下腹まで下げ、袷から突っ込んだ。短い悲鳴を上げて腰が引かれるが、構うことなく中身を探る。ここかと思った場所にホックはなく、女物のパンツなど扱ったことはなかったから、どこをどうやれば脱がすことができるのかわからない。

 けれどもこれはこれで、愉しかった。
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