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姦譎の華
第12章 12
「濡らしてないか確かめてやるからよ、じっとしろって」

 子供の頃、好きな娘の嫌がることをしてしまう、やる側に何の得にもならない愚挙が思い出された。ただし当時と異なるのは、やられる側が身を撚るたびに振り撒かれる色香と、指先に返される熟れ味だ。

 倉庫へ来た名目上、あまり長居をしてはいられなかった。バストを揉んだら、ひとまず満足するつもりでいた。

 しかし何もかもが唆られてならない女体をまさぐっているうち、とてもその程度では我慢できなくなっていた。

 この女が、はいどうぞとイジくらせてくれるはずがない。かといって、ここから逃げ出すこともできはしない。

 抗いに抗わせた末にカラダを弄んでやったら、どうなることだろう。いよいよこの女は屈服し、被虐の悦びに目覚め、「もっとして」とねだってくるのではないだろうか──

「……ひっ!」

 多英が突如、身を固めた。
 静かに揉み合う中、やおらドアが開いたのだった。

 これには島尾も焦った。アソコに触りたいあまり、完全に外への注意を怠っていた。

「島尾さん!」
「お……、おお、稲ちゃん」

 依然ツイていた──と言いたいところだったが、島尾は愛想笑いを浮かべてサッとコートから手を抜いた。
 稲田が怒りをあらわに、先輩へと詰め寄っていく。

 廊下を出ていく多英を見かけ、トイレでの島尾の様子と符合し、聖女が凶禍に遭いそうになっていると確信した。追いかけてみると、非常階段には上にも下にも誰もおらず、昇り降りしている足音も聞こえてこない。
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