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姦譎の華
第13章 13
 佐野という事業部長は強面かつ仕事に厳しいことで有名である。そんな人に電話口で凄まれたせいか、中がどれだけ散らかってようが、引き戸なのだから普通に開けることができることに気づかないほど、若手の子は気が焦っているようだった。

「ちょっとやってみるけどよお」

 島尾はすぐ足元に積んであったダンボールを蹴飛ばした。ガゴンガゴンと、角がけたたましく鉄扉にぶつかる。

「いっ……!」

 その隙に、腹が腰に体当たりをしてきた。
 ドアへ激突しそうになり、口元にあった両手を鉄面に付く。すぐに腕を張って離れようとしても島尾の巨体はびくともしない。

「……うぁっ」

 折しも縫い目を辿っていた稲田が口を窄め、際立った反応を見せる一点に吸いついた。全体を撫でる程度だった感触が萌芽へと集中し、爆発的に広がる甘癒に膝がわななく。唇が衣服ごとはみ、和やかに雛先をほぐしてくると、逆に腕は折れ、肘をも扉についてしまった。

(あっ……、や)

 牝奥がヒクリとおののいた。

 いつ彼が引き戸であることに気づくや知れない。堪えなければ。昨日もそうだった。
 ひとたび緊張が途切れ媚肉が味をしめてしまっては、再び引き締めるのは容易ではない。

 しかし、どうしても腰がくねった。稲田は花蕊に留まった蜜食い虫のごとく、いかに揺らそうとも決して離れようとしない。

「んっ……、んん……」

 少しでもいい、声を出したい。嫌がった悲鳴になるかは自信がなかったが、音に変えてでも不吉な慫慂を逃がしたかった。

「──まさか、そこで変なことしてるんじゃないでしょうね?」
「っ……!!」

 鼻先数センチのところまで迫っていたドアの裏から、そんな疑念が聞こえた。

「変なことってなんだよ」
「煙草吸ったりとか」
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