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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第4章 仲直りの問題

「ローゼル様。わざわざいらして下さって、ありがとうございます」
「いいえ、仕事のついでですもの。こちらこそ、出発前のお忙しい時間に押し掛けてしまって、申し訳無いわ」

 ローゼルはスグリ姫に年明けまでの別れの挨拶をする為に、サクナの屋敷に来ておりました。
 先日のバンシルとの約束が有るので、見合いの件を漏らす訳には行きません。リアンがサクナに挨拶したがったりして付いて来られては困るので、しばらく休むので家で出来る物を仕事場に取りに来る、という口実で出掛けて来ています。
 サクナは仕事で席を外していて、バンシルも先程お茶を用意し終えて、目礼して部屋の外に出て行きました。もちろんビスカスも付いて来ておりませんので、スグリ姫とローゼルの二人きりです。出発前で忙しいであろうバンシルはともかく、サクナ様はもしかして気を利かせて私達だけにしてくれたのかしら、とローゼルは思いました。

「お元気で。また年明けにお目にかかるのを、楽しみにしておりますわ」
「スグリ様がご不在になると、しばらくの間、淋しくなるわね」

 二人は、この地から都までの土地の風物、ビスカスのその後の体調やローゼルの祖母の近況などについて、お喋りしながら名残惜しく、穏やかにお茶を楽しみました。
 しばらくして、スグリ姫が思い切った様に口を開きました。
 
「あのっ、ローゼル様っ?」
「何かしら?」
「ごめんなさい、余計なお世話だと思うのだけど、黙ってられないわ……ビスカスさんとは、仲直りなさったの?」
「それは……」

 スグリ姫にまっすぐに問い掛けられて、ローゼルは口籠もりました。
 元々、ビスカスとは喧嘩をしていた訳では有りません。振られて怒っている内に、見合いが決まってそのまま碌に話もせずに日が経っただけです。
 黙っているローゼルを見て、スグリ姫の顔は曇りました。

「まだ、ですのね」
「ええ、まあ」
「私のせいでお二人が仲違いしてしまわれたと思うと、切なくて……」
「まあ!スグリ様のせいでは無いわ!」
「でも、ビスカスさんがお怪我をなさらなければ、喧嘩にはならなかったのでしょう?」

 確かにビスカスが怪我をしなければ仲違いはしなかったかもしれませんが、ローゼルが求婚めいたあれこれをする事も無かったでしょう。
 ビスカスの命が危ないのではとローゼルが動転した事が、あの一連の騒動の発端なのです。
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