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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第6章 我慢の問題

「……何が、違うのかしら?分からないけど……でも、とても美味しいわ」
「気に入ったか?」
「ええ。いつも申し分無く美味しいんですけれど……このお茶は、何だか懐かしい香りがして、落ち着く様な気がしますわ」
「そうか。それならお前にゃしばらくこっちを納めるか」

 ローゼルの感想を聞いたサクナは、柔和に微笑みました。
 その微笑みを目にしたローゼルは、悪戯っぽく微笑んで、サクナをからかいました。

「サクナ様、以前はそんな風に笑わなかったわ」
「え」
「いっつも、不機嫌そうな顔してばっかり」
「そうだったか?」

 サクナは眉を顰めましたが、その顔さえも以前のように取り付く島もない表情ではありません。

「無理に不機嫌そうにしたって、駄目ですわよ?……そうよね、お幸せなんですものね。不機嫌な顔なんて、出来ないわよね?」
「……クソ……何とでも言ってろ……」

 赤い顔でむっとしたサクナのぼやきを聞いて、ローゼルは涙が出るほど笑いました。

(もしもサクナ様が私に応えて下さったとして、こんな顔をさせる事なんて、出来たのかしら?……お兄様の言った事は、やっぱり当たっていたのだわ……最初から、私じゃ無かったのね。お兄様に負けを認めるのは、ちょっとだけ癪だけど)

「羨ましいわ……サクナ様も、スグリ様も」
「お前も結婚すんだろうが。幸せなんじゃあ無ぇのか?」
「……さあ、どうなのかしら……急かされてばかりで目まぐるしくて、良く分からないの。慣れない事が、ほとんどですし」

 お茶を覗き込む様にして淋しげに微笑むローゼルに、サクナは何かを言いかけましたが、結局は何も言えずに溜息をつきました。
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