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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第7章 甘え方の問題

「誰か!誰か居ないか?!ロゼ姉さんがっ……医者を呼べ!!」

「お嬢様っ!?」

 部屋の扉を開け、廊下に向かって叫んだリアンの声を聞きつけたのは、ビスカスでした。
 血相を変えて部屋に駆け込んだビスカスは、床に崩れたローゼルを認めると、床から体を抱き起こしました。そして一瞬全身に目を走らせてから自分の膝にもたれさせ、両手で包む様にして、ローゼルをしっかり抱きました。

「……お嬢様ー?……聞こえやすかー?」

 ローゼルを腕に抱くと、ビスカスの様子は部屋に入ってきた時と一変しました。

「……もう、大丈夫ですよー……いっぺん、息を詰めてみやしょうか……ああ、そうです……」
 
 いつもよりほんの少し抑えた声ではありますが、それ以外はいつもと変わらず、全く焦っても驚いてもおりません。
 まるで、今日の天気について話しているかの様にのんびりと、震える背中を指先でゆっくり軽く叩きながら、ローゼルに話し掛けました。

「……息を、ゆーっくり、吐けますか?そうそう……なるったけ、ゆっくりです………そのまんま、急がねぇで……そう、お上手だ……」

 ビスカスの声を聞いているうちに、ローゼルの呼吸は少しずつ落ち着いて、震えも収まっていきました。
 ビスカスはローゼルに語り掛けながら、呼吸の速さより少しゆっくりと、背中をとん、とん、と叩いておりました。やがてローゼルが落ち着いて来たのを見て取ると、ビスカスは大きく安堵の溜め息を吐きました。
 そして、手は止めないまま、リアンを鋭く見上げました。
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