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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第7章 甘え方の問題
「お嬢様に、何をなさったんで?」
「別に、何も……恋人達なら、誰でもする様な事だよ」
「あんた…」

 ビスカスがリアンを睨み付けた時、ローゼルがビスカスの腕に触れました。

「……やめて……」
「お嬢様」
「ロゼ!驚いた……心配したよ!」

 ローゼルはビスカスに薄く微笑むと、腕の中から離れて、立ち上がろうとしました。まだ少しふらつきましたが、リアンの差し出す手を借りながら、傍にあった長椅子に腰掛けました。

「ありがとう、もう、大丈夫よ……朝から少し、体調も悪かったの。お騒がせしてしまったわ」
「……本当に、大丈夫ですか?」

 ビスカスが眉を寄せて自分を見透かそうとするかの様に向けて来る視線を、ローゼルは涙が出そうになるのをやり過ごして、笑顔を作って受け止めました。

「ありがとう、大丈夫。もし、何かあったら……あとは、リアンに甘えるわ」
「ええ、ロゼ。遠慮しないで甘えて下さい」

 甘えるも何も、不調の原因を作った張本人は、リアンなのですが。
 ローゼルには他に言うべき言葉が、咄嗟に見つからなかったのです。

「……どうぞ、お大事に。失礼致します」

 ビスカスはローゼルとリアンにお辞儀をして、さっと部屋から立ち去りました。

「大丈夫?何か飲み物でも持って来る?」
「ありがとう。今は何も要らないわ」

 ローゼルは微笑んで、長椅子にもたれて目を閉じました。リアンは心配そうに床にひざまずき、ローゼルの膝に片手を乗せました。

「何でも言って。甘えてくれて良いんだよ」
「……じゃあ、あのブランケットを取って下さる?」
「分かった」

 リアンは立ち上がり、別の椅子に畳んで置いてあったブランケットを取りました。

「はい、どうぞ」
「ありがとう」

 ローゼルは渡されたブランケットを、広げて膝に掛けました。

「……リアン?」
「なあに、ロゼ」
「少し、疲れてしまったの。私からお呼びしたのに申し訳無いのだけど、お話はまた今度でもいいかしら?」
「勿論だよ!僕がここに居てあげるから、少し眠ると良い」
「ありがとう。大丈夫よ、一人で眠れるから……お気になさらないで、お部屋に戻って」
「気にしないなんて無理だよ、僕はロゼの婚約者だもの。……寝台で休む?手伝おうか?」
「リアン」

 ローゼルは、何と言ったらリアンの気を損ねずに、言いたい事が伝わるのだろうと考えました。
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