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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第9章 初夜の問題
婚約式まで、あと数日と迫った日。
ローゼルの部屋に、訪問者が有りました。
「入って良いか?」
「まあ、サクナ様!?今日も、納品でしたの?」
「いや、別の仕事だ」
「別のお仕事?」
「ああ。お前がそろそろ俺に頼みてぇ仕事だぞ」
「私?」
「お前、自分の事なのに、忘れてんのか」
サクナはローゼルに呆れた様に言った後、言い難そうに言いました。
「……お前の初床の花の希望を、聞きに来たんだよ」
「あ」
ローゼルは驚いた後、その事をすっかり忘れていた自分に、苦笑しました。
この地では、結婚式で花片を撒き、初夜の寝床には花片を敷く風習が有ります。
果物の産地として、昔から知られた土地柄です。行われる婚姻の実り多い事を願って果物の花片を撒いていたのが、その風習の由来でした。その為に、結婚式に飾る装花は花屋の仕事でしたが、花片のみを納める仕事は、果物園が担って居るのです。
初床の仕事は、普段はローゼルが担当しておりました。ローゼルが休みの日や多忙な時は別の女性が希望を聞くこともありましたが、サクナが聞く事は滅多に有りません。
いつもは「女の事ぁ女が聞くのが一番だ」と言って女性に任せているサクナですが、ローゼル本人の初床です。しかも最近ローゼルは家から出ていないのですから、領主家に通い慣れているサクナが聞きに来たのでしょう。
ローゼルは珍しく居心地の悪そうな様子のサクナにくすりと笑うと椅子を勧め、侍女を呼んでお茶の用意をさせました。
* * *
「じゃあ、薔薇だけで良いのか?」
仕事として何人もの花嫁の希望を聞いてきて、要領の分かっているローゼルが主役なのです。打ち合わせは滞りなく進みました。
「ええ。冬だもの、揃えられる花は、他にあまり無いでしょう?」
「他ならねぇお前の初床だ。お前が良けりゃあ、温室の花を出したって良いんだぞ」
温室と聞いたローゼルは、「けだものっ?!」と驚いたスグリ姫をふと思い出し、思わずくすっと微笑みました。
「お心遣い、有り難うございます。でも、薔薇で充分素敵だわ。もし他の花もお願いしたくなる様だったら、結婚式で撒けるだろうし……その夜にも、またお願いするわ」
「初夜が二回か。それも良いかもな」
サクナは薄く微笑んで、ローゼルの希望を書き留めた物を、確認の為に読み上げました。
ローゼルの部屋に、訪問者が有りました。
「入って良いか?」
「まあ、サクナ様!?今日も、納品でしたの?」
「いや、別の仕事だ」
「別のお仕事?」
「ああ。お前がそろそろ俺に頼みてぇ仕事だぞ」
「私?」
「お前、自分の事なのに、忘れてんのか」
サクナはローゼルに呆れた様に言った後、言い難そうに言いました。
「……お前の初床の花の希望を、聞きに来たんだよ」
「あ」
ローゼルは驚いた後、その事をすっかり忘れていた自分に、苦笑しました。
この地では、結婚式で花片を撒き、初夜の寝床には花片を敷く風習が有ります。
果物の産地として、昔から知られた土地柄です。行われる婚姻の実り多い事を願って果物の花片を撒いていたのが、その風習の由来でした。その為に、結婚式に飾る装花は花屋の仕事でしたが、花片のみを納める仕事は、果物園が担って居るのです。
初床の仕事は、普段はローゼルが担当しておりました。ローゼルが休みの日や多忙な時は別の女性が希望を聞くこともありましたが、サクナが聞く事は滅多に有りません。
いつもは「女の事ぁ女が聞くのが一番だ」と言って女性に任せているサクナですが、ローゼル本人の初床です。しかも最近ローゼルは家から出ていないのですから、領主家に通い慣れているサクナが聞きに来たのでしょう。
ローゼルは珍しく居心地の悪そうな様子のサクナにくすりと笑うと椅子を勧め、侍女を呼んでお茶の用意をさせました。
* * *
「じゃあ、薔薇だけで良いのか?」
仕事として何人もの花嫁の希望を聞いてきて、要領の分かっているローゼルが主役なのです。打ち合わせは滞りなく進みました。
「ええ。冬だもの、揃えられる花は、他にあまり無いでしょう?」
「他ならねぇお前の初床だ。お前が良けりゃあ、温室の花を出したって良いんだぞ」
温室と聞いたローゼルは、「けだものっ?!」と驚いたスグリ姫をふと思い出し、思わずくすっと微笑みました。
「お心遣い、有り難うございます。でも、薔薇で充分素敵だわ。もし他の花もお願いしたくなる様だったら、結婚式で撒けるだろうし……その夜にも、またお願いするわ」
「初夜が二回か。それも良いかもな」
サクナは薄く微笑んで、ローゼルの希望を書き留めた物を、確認の為に読み上げました。