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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第2章 仕方のない問題
ローゼルがビスカスの看病の為にサクナの屋敷に泊まり込み、ビスカスと揉めて屋敷から怒り狂って帰って来てから、四日が過ぎました。
ローゼルにとって、サクナの屋敷は仕事の場でも有ります。ビスカスに手酷く振られた後も、行き帰りに護衛代わりの腕の立つ使用人を付けられて、仕事に出掛けてはおりました。
しかし、あの日以降、通っているのは、「仕事場」だけです。ビスカスの居る屋敷には、近付いてすらおりません。
(おっぱいデカい女とやらに、見舞って貰えば良いじゃないっ)
ローゼルはスグリ姫への疑いが去った後、時々見掛ける姫の侍女にも一瞬疑いを向けましたが、侍女のお仕着せの胸の膨らみを見て、これも無いわと却下しました。スグリ姫の侍女の胸の膨らみは、贔屓目に見たとしても、ローゼルとどっこいどっこいだったからです。
(……修業時代の知り合い?それとも、街の誰か……?)
ビスカスはほとんどの時間ローゼルに付いて歩いてはおりますが、ローゼルが女だけの集まりに行ったり、サクナの屋敷で集中して仕事をしていたりする時は暇になるので、一人で街に出たりしています。人懐っこく愛嬌が有りお調子者のビスカスは、街中に行くことが時々しか無いにも関わらず、顔の広い人気者でした。街に出る度に何かと頼まれ事をしたり、歌や踊りをせがまれて見せたり教えたり、面倒事をさばいてやったりしている様でした。
(……街の……まさか)
ローゼルは聞いたことしか有りませんが、街中には女が殿方のご要望を満たす為の、色々なお相手をする様な店も有ると言います。その様な店に行けば、スグリ姫どころではなくおっぱいのデカい女も、よりどりみどりで居ることでしょう。
そんな事を考えたローゼルは、急に不機嫌になりました。
「あの、お嬢様?……ひっ!!」
ローゼルの部屋を覗いた侍女は、ローゼルの余りの不機嫌顔に恐怖を覚えて、思わず声を上げました。
「……なあに」
「お嬢様に、お客様です」
「お客様?」
「ええ。バンシル様と仰る方で」
「え?私に?」
バンシルは、スグリ姫の例の侍女です。
(……どうして、あの侍女が?)
ローゼルは何度かバンシルと会っていますが、二人きりで話したことは有りません。バンシルと話したのは、バンシルがスグリ姫と一緒の時と、ローゼルの兄のタンム卿と一緒の時と、そのどちらかの時だけでした。