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お嬢様の憂鬱(「ビスカスくんの下ネタ日記」サイドストーリー)
第10章 痛みの問題
「……どうかしら?」
「とてもよくお似合いですわ」
「本当に、お美しいです」

 身支度を整え終えて尋ねると、侍女達は目を潤ませて答えました。

「ありがとう。下がって良いわ」
「……ローゼル様」
「なあに?」

 普段、侍女達は、ローゼルが退出を促すと、お辞儀をして部屋を出て行きます。この様に声を掛けてくる事は、珍しい事でした。

「本日の婚約式、お目出度う御座います」
「私達、お支度に関わらせて頂いて、身に余る光栄で御座います」
「……有り難う、二人とも」

 口々に祝ってくれる侍女達に、ローゼルは微笑みました。
 嬉しげにお辞儀をして、侍女達は退出しました。一人になったローゼルは、鏡の中の自分をもう一度検分しました。

 青色のドレスは、申し分なく似合っています。今日はその青空色のドレスと共に、家に受け継がれた装飾品の首飾りと足輪と耳飾り、それに腕輪を身に着けて居ます。水晶の小さな粒から大きな粒までを細い金鎖の輪で繋いで編み込んだ意匠の装飾品は、肌の上に零れた朝露の様に輝きました。

 この装飾品は、かつては祖母が身に着けていて、一度は母に譲られた物です。
 この地の女は、成人または婚姻を結んだ時のどちらか早い年齢から、装飾品を身に着け始めるのが慣例です。母が亡くなった時ローゼルはまだ未婚であり、装飾品を身に付ける年齢でも無かった為、この一式は一旦祖母の元に戻されました。その後ローゼルの成人の際に祖母からローゼルに贈られて、それからは、折りに触れて身に着けて参りました。
 ローゼルは、装飾品の収まっていた箱に目をやりました。中に一つ、残っている物が有ります。それは、水晶の中に薔薇を閉じ込めた様に見える彫りが施された、首飾りの先に付ける飾りでした。
 この飾りと腕輪は、家に受け継がれた物では有りません。腕輪は父から母への婚約の贈り物で、飾りは母が嫁入りの際に実家から持参した物でした。

(この薔薇は貴女がお嫁に行く時にあげましょうねって、お母様はいつも仰ってらしたっけ……)

 母がこの一揃えを身に付けたあと箱に仕舞う時、ローゼルはいつも母にせがんで装飾品を見せて貰いました。どれも素晴らしく美しく、幼いローゼルは見る度に、うっとり見惚れたものでした。
 中でも薔薇の彫られた水晶は、本物の小さな薔薇が閉じこめられている様で、いつまで見ていても見飽きませんでした。
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