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契り【~初身世】
第1章 渡り橋
「…でも、私は何もわからない……現世の事も、人間の事も…自分の事もわからない…」
「では、ほんの少しだけ現世を観てみますか?」
「え?」
弥勒は手を伸ばし今福線の額に当てる。
何をするのかと今福線は弥勒を見ると、突然頭の中に電流が走ったような衝撃を受ける。
真っ白になった頭に映像が流れる。
最初の映像は、
病室の病室らしい部屋で白いベッドに15~16歳くらいの少女が踞って寝ていた。
少女の肩は震えて泣いていた。
『…産みたかった!産みたかったのに……!』
「…」
映像は切り替わり、次の映像が流れる。
先ほどの病室ではなく、5~6歳くらいの男の子が口や鼻に酸素チューブをして、腕には点滴をしてベッドに寝ていた。
ピー、ピー、と電子音が室内に響く。
『パパ、ママ、恐いよ…恐いよ…』
「…」
また映像が切り替わり、別の映像が流れる。
先ほどの静かな病室とは違い、今度の映像は何人もの悲鳴が聞こえた。
何台もの車がひび割れて、変形していた。
潰れた車の窓から腕がでている。
建物はガラスが割れて火や煙が激しく出ていた。
赤い車や白い車がサイレンを鳴らし、車の中から人が出てきて、慌ただしく作業をしていた。
…まるで地獄絵図だった。
『おーい!こっちもだっ!!』
『急げーっ!』
『お願いしますっ!この子をっ助けて下さいっ!!』
『うわぁーーんっ!おかーさーんっ!!』
「…」
思わず目を背けたくなる…
でも背けてはだめ!
今福線の大きな瞳から涙が溢れていた…