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契り【~初身世】
第2章 月琴楼
弥勒に連れて来られた先は、賑やかな遊郭だった。
提灯や灯籠の灯りに三味線や陽気な歌声。
障子越しには綺麗な着物を着て、お化粧や簪で着飾った女性が雛壇のように並んで座っていた。
三途の川の静けさは無く、此処はお祭り騒ぎで賑やかだった。
「あの、弥勒さん。此処は?」
前で歩いている弥勒に常夜はおずおずと聞く。
「此処は『三途の川』と『天国』の間…『吉の國』ですよ。」
「吉の國(よしのくに)ですか?」
「そうです。此処は現世で…人間達の邪心で汚れた神達が浄化するために訪れる場所です。」
弥勒が説明すると常夜はあちらこちらと周りを観る。
「浄化って…アレの事ですよね。でも、なんだかみんな…宴会みたいに騒いでますが………」
「此処に来る神は浄化だけが目的ではない。神社や寺に祀られている神や仏が、人間達の願いや厄祓いで神通力を使いきり癒しを求めて此処に来る。」
「……息抜き…ですか?」
「その通りです。」
弥勒の話を聞いた常夜は神様も大変なんだな…と染々した顔で、きらびやかな遊郭を歩く。