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契り【~初身世】
第2章 月琴楼
「フゥ…」
遊郭から少し離れた所に大きな川がある。
川には木で出来た『大橋』が建っていた。
『大橋』と言っても、常夜が管理している『橋』とは違い、少し古く向こう岸が見える。
常夜は木で出来た橋の入り口の手摺りに寄りかかり川を観る。
暗い中、遊郭の眩しい光が、川の側で並んで咲いている枝垂れ桜をぼんやりと優しく照らしていた。
さらさらと緩やかな川の流れる水の音が聞こえる。
初めてお酒を飲み、少し酔ってしまった常夜は冷たい風にあたりながら先程の事を思い出す。
ー二時間前…
弥勒は常夜を連れて、ある大きな屋敷に入った。
屋敷の入り口には葵の暖簾に、金色の三日月に『月琴楼』と描いてある。
中に入ると広々としていて、中央には階段がある。
二階には華やかな着物を着た女の子達が忙しそうに料理やお酒を運んでいた。
「あら、弥勒様。いらっしゃい!」
「女将、ご無沙汰してます。」
弥勒と常がを出迎えたのは、30代後半か40代前半くらいの女性。
紺と菫色の着物を少し崩して着ていて、ドロンワークのレースのショールに、栗色の髪に金色で一輪の花をモチーフにした髪止めで纏めている。
上品で、活発的な女性だった。