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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
フロアを通過してる間に、顔見知りの社員たちが声をかける。

「あれ?樫野さん、復帰?」
「はい。短期ですが、またよろしくお願いします」

みんな心なしか疲れた表情をしている。徹夜している人もちらほらいるみたいだ。

理志が芙実に気付いて目を見開いている。
芙実はさっと目線をはずしてマネージャーについていった。オフィスの一番端の机だった。

とにかく少しでも早く仕事に取り掛かりたい。
芙実はチームのリーダーに挨拶に行って、作業を確認してからすぐに席に戻り、パソコンを起動させた。





「リーダー、終わりました。次どうしましょう」
「え!?もう終わったの!?」

リーダーに尋ねにいくと、大きな声を出され、みんなの注目を浴びる。
しかし、今はどうでもいい。芙実が思った以上に進んでいない。どんどんこなしていかないと間に合いそうになかった。

「はい。どんどんまわしてください」
「お、おお・・・・・了解」

芙実の本気の仕事っぷりに誰もが驚いていた。作業がとにかく早いし、誰かがつまづいていると間違いをすぐに指摘する。

「ここなんスけど・・・・・・。原因が全然わかんなくて」
「吉田はどうした。あいつデータベース詳しいだろ」
「吉田は徹夜でへろへろだったんで帰しました」
「まじかー・・・・・。他の人らも忙しそうだしなぁ・・・・・。もうちょっと頑張ってみてよ」

芙実の近くでパソコンを二人の男性が覗き込んであれこれ話している。
芙実は意を決して立ち上がった。

「失礼します。それ、多分原因わかります。見ていいですか?」
「は?え?」
「見るだけです。実際の作業はみなさんにお任せしますから」

芙実はパソコンを見て、エラーの原因を探った。
慣れた手つきで調べる芙実を、二人は言葉を失って見つめている。

「ここですね。シングルクォーテーションのエスケープ処理してください」
「はあ・・・・・。どうも・・・・・・」
「すげー・・・・・」

芙実は自分の席に戻ると、またすぐに自分の作業に没頭した。
夜には芙実の能力の高さをみんなが知ることになる。
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