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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
トイレに行こうとしてゆかりの席の近くを通った時だった。
あれだけ華やかにおしゃれをしていたゆかりもさすがにやつれてみえる。

髪も一つにまとめているだけだし、化粧も力が入ってないようだった。
ふと見ると目のまわりが赤い。

芙実は通り過ぎようとしたが、気になって声をかけてみた。

「花森さん、どうかしましたか・・・・・?」
「樫野さん・・・・・・」

ゆかりは芙実を見ると、みるみる目に涙をためた。ハンカチで慌てて拭いている。

「私・・・・・・今日、ずっとこのページやってて・・・・・・。でもエラーでちゃってすすまなくて・・・・・」
「そうなんですか」
「誰も教えてくれなくて・・・・・。みんな忙しくて余裕ないみたいで、お願いしてもあとでねって言われて・・・・・・」
「ちょっと見てもいいですか?」

芙実はマウスをささっと動かして動作を確認する。
基本的なところで躓いている。こんなこと、すぐに教えてあげればいいのにと芙実は心の中で思った。こんなことで一日つぶしてしまったなんてかわいそうだ。

「画面から飛んでくる文字、このまま入れちゃだめなんです。変換して・・・・・」

芙実はわかりやすくエラーの内容を説明した。ゆかりはうんうんと頷いている。

「あと、今回のこととは関係ないんですけど、使わないファイル呼び出してるので・・・・・この辺とか。これは整理した方がいいです」
「わかった・・・・・ありがとう・・・・・・・」

ゆかりは問題が解決したことにホッとしたのか、涙を堪えて頭を下げた。

「花森さん、ちょっと休憩しませんか?私、今から休憩しようと思ってて。コーヒーでも」
「・・・・・・・・」

ゆかりは黙って頷いて立ち上がった。
二つあるうちの、皆があまり使わない奥の方の自動販売機がいいとゆかりが言うので、二人でとぼとぼと歩き、コーヒーを買って横にあるソファに座った。

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