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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
「ねえねえ、2階の歯科医院の子。今日の朝、会社の前で蒼井さんに『おやつに食べてください♪』とか言って紙袋渡してるとこ見たよ。あれは手作りだなー」

理志の名前が出て、芙実は内心ギクっとしたが表向きは平静を保って自分の弁当を食べた。

昼休みに芙実は女の子たちと中庭のテーブルに座ってお昼ごはんを食べていた。
仕事の方は皆が頑張ったおかげで遅れを取り戻してきつつあった。
芙実はあまり残業することがなくなってきたが、理志はまだまだ忙しそうだった。

「つきあってもない人からの手作りのお菓子とか、私が男だったら怖くて食べられないんだけど」
「ねー。中学生ならまだしも、大人の女の手作り菓子とか、いろんな怨念こもってそう」
「あの子、前は同じフロアの旅行会社の男とよく帰ってたけどね」

芙実はみんな良く見ているなあと感心しながらも、歯科医院の子がどんな子なのか気になって仕方なかった。

「それにしても、蒼井さん、髪切ってからのモテ方尋常じゃなくない?元々モテてたけどさ」
「いやー、あれはしょうがないよ。私もドキっとしたもん」
「前はワイルドな感じでちょっと近寄りがたいとこあったけど、今はなんか雰囲気柔らかくなって話しかけやすいもんね」
「ほんとほんと!美青年になっちゃったよね。印象の7割は髪形で決まる説に一票だわ~。元が良いのもあるけど」
「あれは女も関係してるって。彼女かセフレかわかんないけど、色気ハンパないもん」

みんながうんうんと頷いている。芙実は何を言ったらいいのかわからず一人黙っていた。

「ねえねえ、樫野さんて彼氏いるの?」

ゆかりに聞かれて芙実は固まった。

いると答えていいのだろうか・・・・・。
しかし、いると答えたら質問攻めにあいそうな気もする。
かといっていないといったら、ああやっぱりで話が終わってしまう。

芙実は中間をとって答えることにした。

「・・・・・・す、好きな人は、います・・・・・」

芙実の答えにみんなが騒然となる。

「えー!そうなんだ!どんな人!?」
「まさかうちの会社の人間!??」
「最近可愛くなったの、恋してるからなんだね~」

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